いわせんの仕事部屋

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振り返りジャーナルを始めよう

学校現場で口頭での対話やコミュニケーションが難しい状況だからこそ、振り返りジャーナルのようなコミュニケーションのチャンネルが大切です。
2学期ぜひ。あるとないのとでは全然ちがいますよ。

 

はじめに

ある年の5年生。グループ間で競争するアクティビティを行った後に書いた、振り返りジャーナルを紹介します。テーマは「リーダーって何だろう?」です。


リーダーシップってしきるんじゃなく、話すことでもなく、ちゃんとみんなの意見を公平に聞いてまとめる役、だと思います。今日一番高く積んだチームは、いつも意見をよく聞いている人たち(あんまり話をしない人たち)がけっこういたから、あのチームはちゃんとみんなの意見を聞いていて、みんな公平だったんだと思う。自分にはどんなリーダーシップがあるだろう。 いつも○○ちゃんたちはこんな気持ちだったんだ…ってことがわかった。


 リーダーシップって「引っぱること」って思いがち。でも自身の体験を振り返る中で「きくことのリーダーシップ」に気づき始めているのがわかります。
振り返りジャーナル(以下「ジャーナル」)は、その名の通り、毎日の振り返りを習慣化するノートです。
そのままでは忘れてしまう毎日の出来事を1日の最後に丁寧に振り返り、自分の成長を記録します。 行事に限らず、授業でできるようになったことや友だちとのトラブルで感じたこと、日々の学校生活すべてが子ども達の成長の種です。しかし体験したことはあっという間に忘れてしまいます。これらをジャーナルに記録すると、後から読み返したときに自分や他者、コミュニティの成長を自分自身でたどることができるのです。先のジャーナルも振り返って言語化したからこそ、その人の「学び」として残っているのですよね。

●なぜ書き残すの?
 ジャーナルを書く間、子どもたちはシーンとした集中した空気を作ります。カリカリカリ…鉛筆の音だけが静かに響く教室で、子どもたちは自分との対話を深めながら振り返りを進めます。
 その日の思考や心の動きを書き出すプロセスを通じて、子どもたちは自分の体験を一旦、整理して、自分の中から外に出します。書くことで「文章化された自分の体験」を、まるで読者のような気分で、客観的に眺めることが可能になるのです。
 ペラペラとジャーナルをめくって「1週間前の自分」と比べてみると「あのときはこう考えていたけれど、今は違うな」といった具合に、自分の思考や行動の変容、そこにある成長を知ることができます。メタに眺めるからこそ、次に生かせることが整理され、振り返りのサイクルが生まれるのです。1年が終わって改めてジャーナルを読むと、自分や友達、クラスの成長がはっきりとわかります。自分で成長を確かめる時間はなんとも幸せな時間です。

新学習指導要領でも「自らの学習活動を振り返って次の学びにつなげるという深い学習のプロセス」 が重視されていますが、そこでも振り返りジャーナルで育まれる力が役立つはずです。

 

●「振り返りジャーナル」を始めよう!
具体的な導入方法を紹介します。誌面の都合で概略の紹介ですので、詳しくは拙著、『「振り返りジャーナル」で子どもとつながるクラス運営』(ナツメ社)をご覧ください。始めるのに必要なのは、クラスの人数分のノートだけです。B5判の大学ノートを横半分に切って使います。

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低学年も同じノートでスタートし、最初は、罫線2行分で1文字分を目安にします。慣れてくると小学1〜2年生も横罫1行にびっしりと書きます。毎日以下の手順で進めます。
①基本は帰りの会に取り組みます。
②黒板に今日のテーマを書きます。
③子ども達は振り返りジャーナルを書きます。
④書き終わったら、前に座っている先生に提出します。
⑤先生はサその場でサッと読んで、簡単なフィードバックをします。

以下、実践で大切にしたいことを整理していきます。

・毎日、帰りの会で5〜10分!
 振り返りジャーナルを書く時間は5〜10分が基本です。B5ノート半ページの分量は、1日分を5分で振り返って書くのにちょうどいいサイズサイズです。最初の2週間は、書くことに慣れるためにも余裕を見て10−15分とりましょう。1日に1ページ書ききるのを目標にします。

・毎日、書くことを徹底しよう 
 何よりも、まず大切にしたいのは「毎日書く」ことです。
 振り返りジャーナルの目的は、「振り返り」の習慣化です。そのためには当たり前すが「続ける」のが一番です。優先順位をあげて時間確保に努めます。続けているうちに、子どもたちが振り返り慣れてきます。とにかく続けましょう。

・ 最初はポジティブなテーマで
 残念な「反省日記」にしないことが大切。最初はポジティブなテーマからスタートしましょう。振り返ることが楽しい!という体験を積み重ねます。ポジティブなコミュニケーションが一定量貯まると、うまくいかなかったこと、辛かったこと等の深い振り返りもできるようになります。「今日の○○大成功!その時どんな気持ちだった?」「私の好きなこと、実は○○なんです」「こんなクラスにしたい!」「今日の算数で私ががんばったことを紹介します」「この土日どんなことが楽しかった?」等々。他のテーマ例は拙著を参照してくださいね。
 
・フィードバックは40人で20分!
忙しい業務の中で、フィードバックを書く時間の確保は難しいものです。ぼくらは他にも教材研究や会議、事務仕事など山のように仕事を抱えています。 無理なく、毎日、続けるために、フィードバックにかける時間は40人を20分と決めてチャレンジしましょう。

・共感のコメントを2カ所程度。
 ジャーナルにフィードバックを書くときは、子どもたちの書いた文章に赤ペンでアンダーラインを引き、コメントがある場合はその横などに一言書き込みます。コメントの内容は、先生の意見ではなく、相づちのようなもの。先生が「うんうん、なるほどなるほど!」と、子どもの話を聞いている姿を想像すると、イメージしやすいでしょう。先生が子どもの毎日を励まし、応援していると子どもが感じるコメントにしましょう。よく使う言葉は、「うんうん」「ナルホド」「OK!OK!」「ありがとう」「スゴイ!」「感動!」「大丈夫」「そっかあ」「一緒に考えてこう」「了解」「へえ〜」「あらら」「そっかあ」「は〜い!」「応援!」などです。

 

・長く書きたくなる時は直接の対話で。
 とはいえ、内容によっては返事を長く書きたくなることもあります。そんな時は、次の日の直接の対話の機会につなげます。「昨日〜って書いてあったから気になってさー」「昨日のジャーナル読んだよ。いやあすごい気づきだなと思って〜」。振り返りジャーナルの中ですべてを解決しようとしないようにします。日々の子どもとの関係性を深めていくことに生かしていきます。


●先生を成長させてくれる
学校教員時代、一番の楽しみは、放課後にコーヒーを飲みながらジャーナルを読んでコメントを書く時間でした。一人ひとりの成長に思いを馳せ、自分自身の実践も振り返る時間。この時間が、先生としてのぼくを成長させてくれました。拙稿を読み、やってみよう!と思ってくださった方々にとって、振り返りジャーナルが子どもの成長、そしてぼくら教員の成長に寄り添ってくれるものになったら嬉しい限りです。

 

振り返りジャーナルについては以下の記事も参考にして下さい。

 

iwasen.hatenablog.com

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