この3月をもって、校長職を退任し、軽井沢風越学園を退職することにいたしました。現9年生とともに、卒業の日を迎えたいと考えています。1年生から9年生の子どもたちには、今日(10月15日)、その旨をお話ししました。
学校づくりの始まりとこれまでの歩み
2016年6月22日。理事長・しんさん(本城慎之介)と東京駅で出会って学校づくりはスタートしました。開校準備の時間を含めて約10年、実際に学校として歩み始めてから5年半。これまでの道のりは冒険と呼ぶにふさわしいものであり、今もなおその途中にいます。
たくさんの期待を背負い、僕自身もたくさんの理想と期待を持って開校した2020年。理想を描くのは簡単ですが、それが実現に向かう道のりは険しかったです。コロナ禍もあり、さまざまな制約の中で子どもも大人もそれぞれが全力で学校づくりに向き合ってきましたが、それでも険しい道のりでした。
ようやくこの2〜3年、じわじわとよい学校に向かっていると、子どもの姿から実感しています。
校長として思うように力が発揮できていないと感じた時期も正直ありました。しかし、スタッフ、保護者の皆さん、そして子どもたちに支えられながら、自分なりの校長像を模索し、ひとりのつくり手として一生懸命歩んでくることができました。そのことに深く感謝しています。
「子どもこそがつくり手」をめぐって
8月に、かぜのーと「一緒につくる人としての子どもの存在」を書きました。
一緒につくる人としての子どもの存在 | かぜのーと | 軽井沢風越学園
その中にこんな一節があります。
「子どもこそがつくり手」。
ことばにするのは簡単だが、実装するのは本当に本当に大変なこと。
学校教育の新しいかたちを探究する。スタッフと共にこの5年半、さまざまな制約の中で、せいいっぱい積み重ねてきたし、でもその道のりは正直ものすごく険しかった。ぼく自身もたくさん苦しみ、でも諦めずにここまで共に、なんとか歩んでこられたと思う。
振り返れば、10年前に掲げた冒頭のことばは、いま子どもたちの言葉や姿に確かにあらわれている。ここまで諦めずに向き合い続けた子どもとスタッフに敬意と信頼でいっぱいだ。
軽井沢風越学園のありようは常に暫定的で、見方によっては「まだまだ」なのかもしれない。だがしかし理想の学校の姿なんてどこにもない。それは理想の社会がないのと同様に。だからこそ「まだまだ」だと変わり続けていること自体が、学校をよりよくしていくための条件なんじゃないかと思う。
大切にしたいことを大切にしながら、よりよいってどういうこと?と問い続けながら、よりよくしたいという意思を持ったものが考え続け、手を動かしつづける。「変わり続ける」意思をもった人たちが、共に影響を受け合いながらつくり続ける状態そのものが、よりよい学校の姿なのだろう。そう思うとぼくらはよりよい学校に向かっていると思う。
この流れを大切にし続けるためには、流れをつくり続けるためには何が大切なんだろう。それは、この冒険の主人公である子どもという存在への敬意、スタッフという存在への敬意なんだろうと思う。そのために日々の微細なできごと、微細な変化に目を向け続けること。その中にわたしたちの営みの確かな手応えがあるはずだ。
今、軽井沢風越学園は「まだまだ」のこともたくさんありつつ、よりよい方向に力強く向かっています。子どもも大人も、それぞれが誠実に、一生懸命風越づくりに向き合い、つくってきたからこその現在地。ここまで一緒に冒険を続けてきたことに、言葉にできないたくさんの感謝があります。
退任・退職の理由とこれから
この10年、私なりに全力で務めてきました。
私はこれから、「子どもこそがつくり手」であるということを、軽井沢風越学園だけではなく、公立学校に広げていくようなはたらきをしていきたいと思っています。
私が風越というプロジェクトに参画した一番大きな理由は、「公立教育が変わっていくことに貢献したい」という思いです。55歳を迎え、残りの人生をどう歩むかを考えたとき、改めてその初心に立ち返り、公立学校に関わることに力を尽くすことを決意いたしました。これが今回の退任・退職の大きな理由です。
「子どもこそがつくり手」であることは、風越だけが大切にしたいことではないと思います。私は残りの人生を賭けて、より多くの子どもにこの実感を届けたい。
昨年卒業したチーが、こう言っていました。
「(自分たちだけでなく)こういう場が全国に広がればいろんな属性の人たちが過ごしやすかったり、楽しくなるんじゃないかなって」。
(かぜのーと 「影響しあいながら 私らしい私の輪郭をつくっていく」より)
影響しあいながら 私らしい私の輪郭をつくっていく | かぜのーと | 軽井沢風越学園
私は、その役を担いたい気持ちがあります。
子どもたちは「ゴリさんらしいな。つくり手であり続けるんだな」と応援してくれるんじゃないかなとも思っています。とはいえ、4月以降のことは具体的にはまだ決まっていません。ゆっくり考えていこうと思っています。
風越は「子どもこそがつくり手」を真ん中におき、子どもとスタッフが共につくる学校として育ってきました。毎日その姿を見るたびに、本当に頼もしく、誇らしく思っています。
任期はまだ半年あります。最後の日まで誠実に努め、子どもたちとスタッフとともに、よりよい学びのコミュニティをつくっていけるよう尽力してまいります。後任については学園内で相談すると共に、学園外にも呼びかけ募集し、しっかりと引き継ぎを進めてまいります。
改めて、この10年余りに渡り共に学校をつくってきてくださったすべての方々に、感謝申し上げます。軽井沢風越学園がこれからも変わり続ける学校であることを願い、皆さんの変わらぬご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。
校舎でお会いした時に、ぜひみなさんとゆっくりお話したいです。
軽井沢風越学園 校長 岩瀬直樹