いわせんの仕事部屋

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今日読んだ本。

今日は都内に、院生の授業を参観に行った。とてもいいチャレンジだった。

なにより指導担当の先生のフィードバックが温かく、それでいて先に進むための示唆に富んでいて、ぼくが一番勉強になった。

たまたま今日の行きの電車で読んでいた本。

はじめてのリーダーのための 実践! フィードバック

はじめてのリーダーのための 実践! フィードバック

 

★★★★

院生の授業は、この本で書かれている経験軸でいう、「ストレッチゾーン」。

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プロジェクトアドベンチャーでよく紹介されるCゾーンの図。

この図で言えばチャレンジゾーンに挑んだ授業だった。

コルトハーヘンがいうように、学びや成長はこの「際」で起こる。

際に立つには勇気がいるけれど、しっかりと立っていた。

前述の本での「ピープル軸」でいうと、指導の先生は、業務支援、内省支援、精神支援のうち、業務支援、精神支援でフィードバックしてくださっていた。

今日は元寇のところだったんだけれど、指導の先生は「なぜ元は日本に攻めてきたのか?」をテーマに教材の奥深さや、世界とのつながり、現代の社会の出来事との比較など、豊かな世界を具体的に説明してくださった。

彼の生徒との関係性のよさ、インストラクションの上手さも具体的にほめてくれていた。

歴史の教材としての奥深さの説明、教科の見方・考え方で授業を改善していく視点の提供。彼の強みややれていることへの温かいフィードバック。

具体的な成長のポイントへのティーチングも必要だし、感情のケアもすごく大事だ。

内省支援オールオッケー、リフレクションオールオッケーに陥らないようにしなくては。人の成長に寄り添う仕事でぼくができていないことはまだまだ山ほどある。

それにしても中原さんの本は、「むずかしいことをやさしく」書かれていてるなあ。知見に裏打ちされていて、それでいて実践的。こういう本が増えるといいな。

帰りの電車はこれ。

大人のための国語ゼミ

大人のための国語ゼミ

 

 ★★★★★

これ、おもしろい。半分ぐらい読み終わったので今日読み終えてしまおう。

今日の夜届く予定の本はこれ。

新しい分かり方

新しい分かり方

 

 明日の電車のお供にしよう。最近ちょっと軽い本ばかり読んでいるなあ。

さあ、昨日仕込んだおでんを食べよう。

 

実践を特盛にしたいとき。

人によく思われたい。力のある人と評価されたい。

そんな気持ちをぼくはずっと持っていました。今も全くないかと言われればうそになる。

自分の実践を語る時、ついつい「盛って」話してしまいがち。いい部分だけを切り取って話す。うまくいっている部分だけを語る。活躍している子だけを紹介する、等々。見ているのは「自分だけ」だからいかようにもできるわけです。

普通盛の牛丼なのに「特盛」にして出してしまう。

「すごいねー!」といわれて、本当にすごいんじゃないかと勘違いしてしまう。そんなことがよくありました。

ちなみに、これは公立校の多くの「学校研究」の冊子や本にも同じことが言えます。書いてあることと実際のギャップ。モリモリに盛って書いてあるのは、当事者はみんな知っています。

話がそれました。

 

そういう「自分を盛る感じ」を突きつけられる瞬間。ぼくは1冊目の本を出版したときにやってきました。

効果10倍の(学び)の技法 シンプルな方法で学校が変わる! (PHP新書)

効果10倍の(学び)の技法 シンプルな方法で学校が変わる! (PHP新書)

 

2007年に出版した本。読んでくださった方々は当然、「岩瀬はこれを実践できている」と判断します。当然「見せてほしい」となるわけです。書き終え、出版されてから、

「言っていること」と「やっていること」が一致しているのか?

という問いに常にさらされることになりました。

「岩瀬さん、本当にやれているなら授業見せてよ。」

この一言が突きつけられるわけです。正直やりきれていないこともありました。

同業者(教員)の若い人たちなら何とかごまかしがきくかもしれない(亀の甲より年の功で)。きかないかもしれないけれど・・・

この本は新書だったので、あろうことか学校外の人たちから多数声をかけられるようになってしまったのです。

大学の先生、プロのファシリテーター、OBS

Outward Bound Japan | 公益財団法人 日本アウトワード・バウンド協会)の副校長、企業の方、等々。

沖縄県の指導主事、元教育長の方々が大挙して来てくれたこともありました。なかなかヒリヒリする感じの人たちがくるわけです。

出会ったばかりのちょんせいこさんが来たときもドキドキしたなあ…。

苫野一徳さん、杉山史哲さんが来てくれたときも緊張したなあ。

そういえば今、軽井沢風越学園設立準備財団で一緒に活動している本城慎之介も2007年頃に参観に来てくれたんだった。今思えば運命の瞬間だった。

 

参観者が来る度、毎回毎回、ぼくは「ほんとうにやれているのか」という問いと向き合うこととなりました。

当然やれていたり、いなかったりラジバンダリ。でも「実践を外に開き続けること」が、どれくらいぼくを前に進めてくれたかわかりません。自分に見えていること、見えていないことが、毎回いただくフィードバックから明らかになっていきました。「痛い思い」をすることもしばしばでした。

でも、学校外の方の参観が多かったからこそ、既存の学校文化の外からのフィードバックがぼくの実践をより前に進めてくれたなあととも思います。

「お互い先生って呼び合うのって、変な文化だねー」

「自分のこと先生って呼ぶ人たちってどうなの?」

「○○さんは、今日の授業では置いていかれている人になっていたんじゃない?」

「そもそも、なんでこの形にしているの?不自然じゃない?」

なんて痛いのも。でもそれが自己強化にはまらず、少しずつでも自分を問い直しながら実践を変えていく力になりました。痛かったけどね。

もちろん、自分では気づいていなかった、自分の実践の価値を知る機会にもなりました。なかでも2007年にAさんにいただいたフィードバック、

岩瀬さんの学級は「有機農法」。

有機農法のよさは、
いろいろ複雑にからみっている豊かさ、
論理で説明できないもの、
常に変化しているもの、
右肩上がりでなくてUp-Downがあるもの、
破壊と建設をしながら育まれていくもの、
弾力がある、柔軟である、
一見、無駄なようでいて、無駄がないもの、
だから種が、自ら取捨選択して栄養を採り入れ、育っていく、
育つ力は当然、強くなる、

 

は、それ以降のぼくの実践の核となりました。

 

たくさんの方の目にさらされ、実践を真ん中において対話を重ねることで、ぼくは自分の実践を切り取り、発信する言葉が丁寧になっていったとも思うのです。。

 

自分の実践は見えているようで見えていない。

いや、見たいように見ています。

だからこそ。

外に実践を開くことで、見えていなかったこと、見たくなかったことに向き合い、自分の中で当たり前になっていることを問い直す契機になります、ちょっと痛いけれど、その価値はあるなあと。もっと言うと、外に開くことなくして、教員としての成長はないでしょう。

「言っていること」や「書いていること」と「やっていること」のバランスが取れているってすごく大事だなあと思うわけです。その判断は自分ではできない。外の人が必要なのです。

 

今週金曜日、大学時代の親友(悪友)、神吉宇一と登壇します。大学時代、どうしようもない2人だったけど、何の因果か、今や2人とも大学の教員。もう笑うしかない。そこで話すことを整理していて考えたことを書きました。

ではお休みなさい。 

 

 

PYONKEE、おもしろいなあ。

この本を頼りに、PYONKEE始めました。

小学生からはじめるわいわいタブレットプログラミング

小学生からはじめるわいわいタブレットプログラミング

 

国際大学グローバルコミュニケーションセンター准教授の豊福晋平さんが紹介されていたのを見て購入してみました。(最近、ICTやカリキュラム関連でいろいろご相談させていただいています)

PYONKEEとは、 簡単にいえば、SCRATCH(スクラッチ)というプログラミング言語のipad版。スタンドアロンで動き、またタブレットに最適化されているらしい。

 

www.softumeya.com

 

小4娘にこの本を渡し、「これおもしろそうだよ。やってみたら?」

早速いじりはじめてました。

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おお、30分経たずしてわかってきたみたい。本に書いてある通りの「ルーレット」に、オリジナルストップボタンが追加されてる。

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スタートボタンを何とか追加しようと1時間試行錯誤したが、うまく動かず断念。でも「やりたいこと」をターゲットにたっぷり試行錯誤できるって大事。ぼくの役目は横で「動いた-!」と一緒に喜んだり、一緒に悩んだり。ぼくも初めていじるというのが、結果大事だったな。

 ipadの加速度センサーも簡単にできた。


ぴょんきーぴょんぴょん

 

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 「はみ出たらアウトみたいにしたいんだけど」次のプロジェクトが次々と立ちあがってくる。プログラミングって自分の「作ってみたい!」から出発して、次々に生まれて来る「もっとこうしたい」を自由に試行錯誤することが大事そう。そこに伴走してくれる大人や、刺激しあう友だち、必要なときに手に取るテクストがあれば十分そう。しばらくは一緒に遊んでみよう。

この入門本、すごくわかりやすいです。

小学生でも充分自分で読み解けるし、例として載っているプログラムが本格的。チャットアプリ、ペイントアプリまでつくれるようになるんですよ。子どもだましじゃない本格派の本。こういう本増えてほしい。

 

          *  *  *

今週読んだ本は、 

18歳からの格差論

18歳からの格差論

 

★★★★

非常にわかりやすかった。30分もあれば読めます。他の本も読んでみよう。

異才、発見!――枠を飛び出す子どもたち (岩波新書)

異才、発見!――枠を飛び出す子どもたち (岩波新書)

 

★★★★

東大先端研の異才発掘プロジェクト、ROCKET のことがよくわかります。中邑さんの言葉が迫ってきます。

育てにくい子は、挑発して伸ばす

育てにくい子は、挑発して伸ばす

 

 ★★★★★

ROCKETのディレクターを務める中邑賢龍教授の本。ROCKETのABL、PBLは参考になります。ゴールがはっきりしていて計画性のないPBLの迫力

 

ゲンロン0 観光客の哲学

ゲンロン0 観光客の哲学

 

 政治がゆれている。改めて丁寧に読み直しています。

 

  *  *  *

 

今週は徳島の小学校への日帰り出張も含めて、移動三昧。今日明日も出ずっぱりなので、さすがに疲れが・・・ちょっと休憩がほしいなあ……

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最近読んだ本。

なんだかばたばたしております。

備忘録的に、この2週間で読んだ本を挙げておきます。

五つ星での評価。

★★★★★  必読。万難を排して読んでほしい。

★★★★  まあまあよかった。読んで損なし。

★★★  普通。興味があれば。

★★   うーん。ぼくにはあわなかったなあ。

★  うーん、うーん。正直お薦めしない。

という主観的な評価です。

特に最初に取り上げる2冊は丁寧に書評を書きたいのだけれど、時間が取れず、このままでは流れていってしまうのでとりあえず書名だけでも、とあげておきます。

 

科学が教える、子育て成功への道

科学が教える、子育て成功への道

  • 作者: キャシー・ハーシュ=パセック,ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ,今井むつみ,市川力
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2017/08/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 ★★★★★

これは必読中の必読。新指導要領でも「資質・能力」に焦点が当てられていますが、非認知能力への注目度が高いです。

 

この本で挙げられている6つのC。

コラボレーション

コミュニケーション

コンテント

クリティカルシンキング

クリエイティブイノベーション

コンフィデンス

 

この6つのCは、子どもの発達についての研究にもとづいた何十年にもわたる学習科学の成果から生まれているのがポイントです。ただの直感とか経験知じゃないのよね。

このスキルはm持って生まれたものではなく「学ぶことで伸ばすことができる」スキル。これすごく大事。もう一つのポイントは、これは教えるためのスキルではなく、学習者自身に焦点をおいた「子どもがどう学ぶか」であること。この6つはカリキュラムの視点にもなるし、なによりプレイフルに学ぶことの価値を再認識させてくれます。

いやあすごい本です。翻訳もすごく読みやすく(さすが市川さん!)、これからの教育には必読書です。タイトルがキャッチーですが骨太です。

 

 

私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む

私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む

 

 ★★★★

「豊かさのなかで育った子供にあって、貧しさのなかで育った子供にないものはなんなのか?」というストレートな問いに答える本。この本もまた非認知能力に焦点を当てています。

「非認知能力は教えることのできるスキルである」と考えるよりも、「非認知能力は子供をとりまく環境の産物である」と考えた方がより正確であり、有益でもある。

 

〜子供たちのやり抜く力やレジリエンスや自制心を高めたいと思うなら、最初に働きかけるべき場所は、子供自身ではない。環境なのである。(p27)

非認知能力が注目されると、それにすぐにストレートにアプローチする=教えるということをしがち。でもこれは間違い。

ということは、学校にできることがある、ということ。

その環境作りの視点として、デシ&ライアンの自己決定理論を論拠に具体的な提案がなされています。ぼくも学級経営の授業ではこの自己決定理論を紹介しているので、その点ではちょっとうれしかった。なにより非認知能力を個別の技能ではなく、「子供たちが学習をしている現場の状況に大きく左右される習慣や態度、ものの見方である」としている点が興味深い。学校でどのような継続的な体験の積み重ねができるかが決定的に重要ということです。

後半で紹介されている学校もチェケラ!です。サイトは英語だけど・・・・・・・

ポールタフの本はこれもおもしろい。

成功する子 失敗する子――何が「その後の人生」を決めるのか

成功する子 失敗する子――何が「その後の人生」を決めるのか

 

 つづいてはこちら。

あの学校が生まれ変わった驚きの授業:T中学校652日物語

あの学校が生まれ変わった驚きの授業:T中学校652日物語

 

★★

テレビでも取り上げられていましたね。読んで損はないけれど…ぐらいでした。これぐらいの実践が注目されるということは、逆に今の学校教育の内実を問われていると思わされます…

作ることで学ぶ ―Makerを育てる新しい教育のメソッド (Make:Japan Books)

作ることで学ぶ ―Makerを育てる新しい教育のメソッド (Make:Japan Books)

  • 作者: Sylvia Libow Martinez,Gary Stager,阿部和広,酒匂寛
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2015/03/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (4件) を見る
 

 ★★★★★★ (6つ!)

これはすごい。すごすぎる。この本を読んで以来、教科カリキュラムの再編イメージが止まらず大変です。今、このタイミングだからこそ読むべき本。パパートのいう構築主義は、今こそ検討すべき学習理論です。この本に触発を受け手、CANVASの石戸さんの本を再読。

子どもの創造力スイッチ!   遊びと学びのひみつ基地CANVASの実践

子どもの創造力スイッチ! 遊びと学びのひみつ基地CANVASの実践

 

★★★★★

本は読むタイミングによって伝わるメッセージが違う。軽井沢風越学園のカリキュラムづくりをしていて、「作ることで学ぶ」を読み、このタイミングで読むと響きます。CANVASの実践のすごさに圧倒されます。

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学びと遊びを、「学校と学校外」にわけないで「まぜる」。アイデアを深めたい。

石戸さんの本を改めて一気読み。

子どもたちは電子羊の夢を見るか?(1) 0歳からはじまるデジタル教育 (カドカワ・ミニッツブック)

子どもたちは電子羊の夢を見るか?(1) 0歳からはじまるデジタル教育 (カドカワ・ミニッツブック)

 
 

子どもたちは電子羊の夢を見るか?(3) よみかきプログラミング (カドカワ・ミニッツブック)

 
デジタル教育宣言 スマホで遊ぶ子ども、学ぶ子どもの未来 (角川EPUB選書)

デジタル教育宣言 スマホで遊ぶ子ども、学ぶ子どもの未来 (角川EPUB選書)

 

 

 ★★★

幼稚園、保育園の新指導要領を理解するために。わかりやすかったです。

 

デューイ・スクール―シカゴ大学実験学校:1896年~1903年

デューイ・スクール―シカゴ大学実験学校:1896年~1903年

  • 作者: アンナ・キャンプ・エドワーズ,キャサリーン・キャンプ・メイヒュー
  • 出版社/メーカー: あいり出版
  • 発売日: 2017/07/01
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 
臨床心理学増刊第9号―みんなの当事者研究 (臨床心理学増刊 第 9号)

臨床心理学増刊第9号―みんなの当事者研究 (臨床心理学増刊 第 9号)

 

 この2冊は自分の研究のために。両方とも味わい深い。

 

ノーミソがつかれたときは小説を。

月の満ち欠け 第157回直木賞受賞

月の満ち欠け 第157回直木賞受賞

 

★★★  佐藤正午らしい物語でした。『永遠の1/2』の方が好きだったな。

AX アックス (角川書店単行本)

AX アックス (角川書店単行本)

 

★★★  連作集。『グラスホッパー』等に比べるとパンチが弱い。おもしろいんだけどね。

 

よるのばけもの

よるのばけもの

 

★★★★

「君の膵臓をたべたい」も 「また、同じ夢を見ていた」の2冊はぼくの中ではすごくよかった(特に後者)。「君の膵臓をたべたい」は我が家の家族を次々と号泣の渦に飲み込んでいます。

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

 

 「よるのばけもの」も前作2作に叶わないもののよかったです。この作家はこれから楽しみだなあ。

 

さあ、明日は徳島出張日帰りです。

朝4時に起きて向かうぞ-!!うおー。

 

 

 

 

振り返りを物語風に。

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ぼくが小学校の担任をしていた頃のお話。

学級では、毎日「振り返りジャーナル」でその日の出来事を振り返ることを日課にしていた。ぼくもまた毎日振り返りを書いていた。子どもたちはノートだったけれど、ぼくは書字があまり得意ではないのでパソコンで。よく考えると子どもだってパソコンで記録していったっていいんだよな。おっと話がわき道にそれました。

「振り返りジャーナル」で子どもとつながるクラス運営 (ナツメ社教育書ブックス)

「振り返りジャーナル」で子どもとつながるクラス運営 (ナツメ社教育書ブックス)

 

ある日の算数。算数は「単元内自由進度の個別学習」で行っていた。その単元の中なら自分のペースで自分の学びやすい学び方え自由に進めていい。もちろんわからないときは友だちに気楽に「ここ教えて!」と聞いていい。

その日の算数はいつにも増して集中した空気に包まれていて、学び合う姿もたくさん起きていた。ぼくも積極的に中に入っていって質問したり、教えたり、見ていたりした。もちろん全部が見えるわけがない。今日、29人一人ひとりの中ではどんなことが起きていたんだろう。ちょっと聞いてみたいなと思った。そこでふと、

「自分を主人公にした物語で書いてたらどうだろう?」と思い立った。

ぼくは〜ではなく、第三者として、「岩瀬は〜」みたいに書く。
ちょっと引いたカメラから自分の物語を、他者の目から書いてみる感じ。作家の時間(ライティング・ワークショップ)を始めたばかりだったし、書くことの楽しさ、人に読んでもらうことの楽しさを味わい始めているときだったので、振り返りを作品のように書くっておもしろいんじゃないかな、と思ったわけだ。
 授業の終わりにぼくの思いつきを提案してみたとき、「うーん、イワセンよくわからないなー」と言っていた人もいたけれど、「ぼくもふと思いついて、うまく行くかどうかよくわからないんだ。試してもいいなーっていう人はやってみてよ。」とお願い。7割くらいの子はやってみたという感じだったろうか。
 
これがなかなかおもしろかった。
自分を客観的(メタ)に見る練習でもあるし、なにより引いて見たることで、自身の再発見があった人もいたようだ。いくつか振り返りジャーナルを紹介したい。名前等は全て仮名で場面も少し変えてあります。
 
まずは、ふうかさん、はづきさん2人の振り返り。この1時間は二人でグッと学び合っていた。同じ時間を共有しても体験していることは当たり前だけれど違う。
 
ふうかさんの物語
キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴った。ふうかははづきの席へ行き勉強を始めた。ふうか、はづき、つかっち、りさで学び合っている。
「つかっち、ここは工夫してやった方が効率がいいよね!」ふうかはいった。
「そうだね!」 つかっちは優しく教えてくれた。
「こうりつってなに?わかる?りさ」
はづきは笑いながら言った。りさも笑いながら首をかしげた。はづきは仕上げの問題を家でやってきていて、わからないところをふうかに聞いた。はづきはわかった振りをして通り過ぎていくところだったから、「はづき、説明してみて。」ふうかは厳しく言った。
「えっとねー、ここはこうだからー・・・」はづきの説明は意味不明。「わかってない!」ふうかが言うと、はづきが、
「先生ーわかんないー」
先生が教えていると、つかっちも一緒にはづきに教えている。ようやくはづきもわかったようだ。はづきがぼーっとしていたので、「ハイクラス問題集やろう!」とふうかは声をかけた。
やっとの事で1問解いた。2問目もなんとかねばって解いた。
はづきはイワセンに自慢げに言う。「ねえ、解けたよ-!」
イワセンも、「力がついたねー!」とふうかをほめる。
ふうかは思った。成長したな−。はづきがもっと力を伸ばしていけるのが楽しみだな-。ふうかははづきにすごく力がついたことをすごくうれしいと思う。
「よーし、もう1問!」
はづきは自分の力で3問目を一生懸命解いていた。そんなはづきの一生懸命の顔はとてもかっこよかった。はづきが解けたときのうれしそうな顔を見て、ふうかもすごくうれしくなった。
 
 
○はづきくんの物語
算数の時間がはじまった。先生の「始めてください」と同時に、ふうかが、「今日はハイクラスをやろう」と元気に言ってきた。はづきは驚いた。まだハイクラスなんて一回もやったことないのに・・・・でも、ふうかと一緒にやってみた。予想通りはづきはわかっていなかった。
でもふうかは、あきれながらも先に進めないではづきをサポートし教えてくれた。何とか2問解けた。最初はやる気にもならなかった。でもふうかに厳しく、「すぐにあきらめるな!」と言われた。はづきは必死に「負けるものか!」と思いながら難しい問題を解いた。解けた達成感は最高だ-!!明日もふうかの厳しい指導で励む。
 
         *  *  *
 
おもしろいなあと思う。ぼくには「ああ2人がんばっているなー」ぐらいにしか見えていなかった。こんなエピソードにあふれた1時間だったんだなあ。
つぎはあやの振り返りジャーナル。
 
○あやさんの物語

○2時間目がはじまった。
あやは予定表がみあたらない。(まーいっか!)と思いながら始めた。今日はいつも通りともなと始めた。
ともなとは算数で仲良くなった。算数で友達ができるのは初めてだ。いつも通り算数をしていると、たなっちが校庭から聞こえてくるソーラン節の音でナゾの踊りを始めながら問題を解いている。(バカじゃないの?)と思いながら算数を進めた。
今日はハイクラステストを進めた。イワセンが、「あや、楽勝?」
あやは小さな声で「うん」とうなづいた。なぜかは、すごく集中していたのに話しかけてきたからだ。少しその声がじゃまだった。だから今日は21問しかできなかった。いつもなら30問以上できていたのに・・・。

「あと5分だよ-」のイワセンの声を無視して続けていたら、「キーンコーンカーンコーン」チャイムが鳴った。(もっとやっていたかったのになー。バトンの練習いきたくないなー)と思って、バトンの練習をし始めた。

 

          *  *  *

 ああ、なんと残念なぼくの言葉。よかれと思ってやったことでどれだけ邪魔をしてきたのだろうなあ。それにしてもあやさんの振り返りからは、「学習のオーナーシップを持つこと自体が、学びのモチベーションにつながる」ことが見えてくる。
 

○ナナさんの物語
チャイムが教室に響く。今、算数の時間がはじまった。
ナナは今日、力をつける問題に挑む。今日は隣のそうたと挑戦するようだ。ナナは鉛筆をとるとカリッカリッカリッと音を立てながらノートを数式で埋めていく。となりのそうたが少し問題を険しい顔で見ていた。そうたはナナに質問した。ナナはそうたに解き方を教えた。
ふと前を見ると、さおりがやさしく、たけしに教えていた。たけしはわからないところをしっかり聞く。みんな必死。問題を解いているうちに、みんな集中して教科書にだんだん体が寄ってくる。わからない人は、もう1人でモジモジしてたりしない。説明のうまい人や、わかりやすい人のところへ行って、助けを求める。聴かれた人は快く教えていた。みんなやさしい。時には厳しい・・・・・そんなクラスになってきたのを見たナナはうれしくなった。そんなことをぼおーっと考えていると、さおりのたけしへの説明はまだ続いていた。ナナは我に返る。さおりはまだたけし一生懸命伝えている。
さおりはまるでたけしの家庭教師みたいだ。さおりを見ているとさおりのようにやさしくて、一生懸命に教えられるようになりたいと夢見る。おいおい、夢見てる場合か!と心のナナが言う。
ナナはまた目の前の問題に手を出す、そしていつしかチャイムが響いていた。
 
○そうたくんの物語
今日も算数がはじまった。分数のかけ算。案外いけるかもと思いながらはじめた。そうたは、終わっていない問題に取りかかろうと思った。隣を見ると、ナナがいた。ナナと終わっていない問題が同じだから一緒に取りかかった。何問かやっていくうちに解き方を忘れた問題にであった。うーん。先生に聞いてもイマイチわからない。
「ナナー、ここどうやるの?」「ここはこうしてー」ナナは手を止めて教えてくれた。なるほどね。わかった。「ありがとう、カナ」いやー、わかるの楽しいな−。「あと5分でーす」
イワセンのかっこいい声が響く。やば。ここだけは終わらせたい。必死に解いた。「休み時間だよ-!」イワセンの声が響く。もうちょっとで終わったのに-。算数が大好きだ。テスト100点とりたいからもうちょっとやろう、と思ったけど、学習計画の表を見てこよう。鉛筆を転がし、紙を見に飛び出した。
  
          *  *  *
 
ぼくたちは、学級をついつい一つの固まりとして見てしまいがち。でもそこに29人いれば、29通りの物語がある。ひとつひとつの物語がつながったり、ぶつかったり、寄り添ったり、絡まったりしながら日々が紡がれていく。
一人ひとりの物語に耳を澄ませること。
一人ひとりの目から、この場はどう見えているのか、何を体験しているのかに目をこらすこと。
 
もちろん全部がわかるはずもないし、全部わかろうとすること自体がいいこととも言えないし、わからない方がいいこともたくさんある。でも一人ひとりが自分の物語を生きているということは、ちゃんと心に留めておきたい。
 
そんな当たり前のことに気づかせてくれた「物語風振り返りジャーナル」でした。
大人もやってみるとおもしろいかも。ちょっと自分を引いて眺めてみる体験になるかもしれません。

軽井沢風越学園準備財団、メルマガ第5号が発刊になりました。

軽井沢風越学園準備財団のメールマガジン、第5号が発刊になりました。今回の内容は以下の通りです。
【1】わたしたちワークショップ、申込受付開始します
【2】情景「いろいろな人が行き交う学校」更新しました
【3】スタッフインタビュー 甲斐崎博史
【1】、【2】で、ぼくたちが目指している学校像が伝わるのではないかなあと思います。
新しい「普通」の学校ってどんな学校なのか準備のプロセスで何度も立ち戻っている問いです。
 
今回の情景、ぼくは個人的にとても好き。2020年、これが実際に起きているといいなあと素直に思えます。ありたい姿を探究し続け、情景を描いていきます。スタッフインタビューは、盟友KAIこと甲斐﨑博史のインタビュー。もう10年以上一緒に歩んできた彼と一緒に学校づくりに関われているのは本当に幸せです。甲斐﨑は明日から3ヶ月、オランダに旅立ちます。また大きく変化して帰ってくるのだろうなあ。いってらっしゃい!
ぜひ読んでください。そしてぜひ感想をお聞かせください。一緒に、新しい「普通」の学校の姿を探したいです。

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もうひとつ。greenzで取材していたいた記事です。ていねいにていねいに記事にしていただいて本当に感謝です。

greenz.jp

 写真が恥ずかしいけれど、こちらもぜひ。本城とぼくは、共通点もたくさんあるし違いもたくさんある。だからこそおもしろいものが生まれる確信があります。
 
 

増刷が決まりました。6刷感謝。

 ぼくの初の単著本、『クラスづくりの極意』、今日6刷の連絡が来ました。

 

クラスづくりの極意―ぼくら、先生なしでも大丈夫だよ

クラスづくりの極意―ぼくら、先生なしでも大丈夫だよ

 

 もう6年以上読み継がれていることに心から感謝。

今読み返すと「若いなー!」と思うこともしばしばですが、

ぼくの原点の本です。

よかったら手に取ってみてくださいね。

 

写真もたくさん載ってます。

なんと中川綾さん作のチームゲーム「てがみち」が綴じ込み付録でついているという実は豪華な本です。

 

iwasen.hatenablog.com

 

いやあ、何とも嬉しい。