学校を超えた学校
軽井沢風越学園がスタートしてもうすぐ4ヶ月が経つ。
通常登校が始まってからは2ヶ月。4年の歳月をかけてきた学校がいよいよ開校、となってもっと感慨深いものかと思っていたら、それは一瞬で、すぐに「よりよくするには」でノーミソが止まらなくなる。
満足するタイミングなんてないのだろう。
で。
今起きていることを毎日じっくり観察しつつ、それを思考の取っ掛かりに、3年後、5年後、10年後を構想すしたい。そのためには圧倒的にインプットが足りていない。というわけでがんがん読んでいます(再読を含む)。ぼくは読むことで思考が刺激されてr着想が生まれるタイプなので、インプットなくして思考がジャンプしない。
最近再読したのがこれ。
最初に読んだのは20代前半。その頃に引いた線が今もなお残っている。改めて読み直すと、当時全然わかっていなかったことに気づく。実践を通して経験したことがあることで読めることが変わる。
びっくりしたのが200ページの「学校を超えた学校」。
長いが引用してみる。
急進的な開放教室では、教科の時間割がなくなり、同時に学級と学級との間の壁、さらに学校と(日常生活の場である)地域社会との間の壁も大幅に低められている。とり去られるところ まではいかないにしても、である。
普通の学校のように、二時間目は算数、三時間目は国語と いうふうに授業が行なわれるのではない。それぞれの子どもが、いわば自分なりの時間割をっ くるのである。いくつかの基礎教科については年間の最低ノルマが決められているものの、それ以外に何をするかは、子どもによって違う。小学校の高学年ぐらいになると通常は、一週間 ごとに子どもがたてる計画に教師が助言を与え、合意したところで一人一人別々の時間割がきまる。
助言を与えるといっても、なかにはかなり強引な教師もいるが、これに対しては頑強に 抵抗する子どももいて、この時間割をつくるということ自体が、ある意味では興味深い社会的 相互交渉の場になっている。時間割をどうこなすかも、子どもの自由にまかされている。
だから一つの教室のなかに、国語をやっている子どもたちと算数をやっている子どもたちが同時に存在するということがおこりうるわけである。国語といっても、本を読んでいる子どももいれば、一生けんめい作文を書いている子どももいる。大体、開放教室は他の教室よりもさわがしい。
それで、とくに集中し て何かをしたいというので、ダンボール箱のなかに頭をつっこんでやっている子どもも出てくる。教室間の壁も低くなっているから、子どもたちは必要と思うときには図書室にいったり、 あるいは理科の実験室にいったりしてもよい。
教科に含まれない活動もいろいろあることに注目したい。たとえばその地域の彫金の上手な人をよんできて、実演してもらうといったことも行なわれるし、大学のフットボール選手がたまたま町に帰ってきていると、その人にコーチしてもらうといったようなこともありうる。
小学校の高学年になると、付属の幼稚園にいって先生の手伝いをする、といった活動も取り入れ 避られている。このことが学ぶ側の自己選択の可能性を大きくするだけでなく、自分が獲得した知的有能さが現実の生活のなかで役に立つという実感を与えるのにも寄与していると思われる。代行主義と身分段階制を軽減したことの効果は、学校での経験や学習一般への子どもたちの肯定的な態度―学校へ行くのが楽しい、勉強がおもしろい、など―に反映されているように思える。
1984年にすでにここまで書いている。先人はここまで具体的に進んできている。その巨人の肩にのりつつ、やはりその先の未来を描きたい。
今ハマっている本はこれ。
学習者中心の教育を実現する インストラクショナルデザイン理論とモデル
- 作者:C.M.ライゲルース,B.J.ビーティ,R.D.マイヤーズ
- 発売日: 2020/07/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
これは必読ですね。これ読まずして学習者中心の教育は語れなくなるでしょう。ただ章によって訳のクオリティがバラバラで読みにくさもあります。
この本は全部の章読む必要はなく、読みたいところから。僕の関心では、
第1章 学習者中心の教育パラダイム
第5章 カリキュラムの新しいパラダイム
第9章 自己調整学習のためのインストラクションのデザイン
第10章 教育的コーチングのデザイン
の4つが思考を進めてくれました、
27ページには、
学習者中心の教育パラダイムは、指導者中心のパラダイムとは根本的に異なる。達成度基盤型の教育の普遍的原理が意味することは、私たちが知っている学年、成績、そして教室でさえも、学習者の成功には不適切で有害であるとの指摘である。その結果、指導者中心のパラダイムの成功事例と、学習者中心のパラダイムの成功事例とでは似ているところがほとんどないのが普通である。
と挑戦的です。
この数日刺激をうけまくっています。歯応えがあるので万人にはお勧めできませんが、これからのカリキュラム、評価を考える上では欠かせない本ですね。
並行して、これ読んでます。
行間の密度が高すぎて、お腹いっぱいになります。石井さんの(現時点での)教員向けの集大成の本。大学院に残っていたら教科書にしたろうな。
この本が次は再読の順番待ち。