いわせんの仕事部屋

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価値のインストラクション

北海道の石川晋さんが編集長のメールマガジン「学びのしかけプロジェクト」(http://www.jugyo.jp/)。第164号にボクの原稿が掲載されました。

2年前の記事ですが、自分の記録のために再掲しておきます。

(2011年11月11日発行)
         

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1.価値のインストラクション
            「ワークショップ」編集委員
              埼玉県狭山市立入間野小学校  岩瀬 直樹

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1,Being
信頼ベースのクラスづくりには、子どもたちの参画が不可欠です。そのための方法のひとつに「Being」があり,毎年、クラスで実践しています。メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」112号で、遠藤安孝さんが、Beingについて書かれています。
 
(以下引用)
PAのBeingとは、模造紙などにグループを象徴するのにふさわしい絵を描き(誰かに横たわってもらい、その人型を縁取るなど)、その絵の中に、自分の取るべき態度・行動をはじめ、推進的な言葉・肯定的なフレーズを書き込んでいくものである。
 
プロジェクトアドベンチャージャパン(PAJ)のホームページにある、Beingの実際例
→ http://www.pajapan.com/download/paj_manual_uncertainty.pdf
  
子どもたちが安心して学び合える環境をつくり続ける(学級なら1年間)ためにBeingを用いるが、「自分たちのために楽しいクラスをつくりたい」というような、自分たちで前へ進んでいる意識をもたせることが、小学校高学年以上の児童生徒には特に大切であると考える。(引用終わり)
 
クラスでBeingを実践してもうずいぶん経ちますが、最初の頃は、「ボクが作りたいから作る」ものでした。子どもたちは、充分に手順を理解し、楽しそうに作っているけど、「なぜBeingを作るのか」納得できないまま、ボクに作らされるものになっている。だから、子どもたちにとって「本当に価値のあるもの」にならず、教室に掲示されたBeingは、やがて緩やかに「風景」になってしまい、誰も気にとめない、ということに。
  
2,価値のインストラクション
しかし、この数年は、Beingが子どもたち全員にとって「価値あるもの」に変化してきています。なにがこの変化を支えたのか。
本メルマガの編集長、石川晋さんの99号「価値の説明」で、「あ、これだ!」と気づきました。ファシリテーターのちょんせいこさんが石川クラスに来訪し、生徒たちに、「なぜホワイトボード・ミーティングを学ぶのか」その価値を徹底して説明したエピソードをもとに、以下のように論じています。(以下引用)
 
「活動中心の授業」では、学習のフレームがしっかりしていれば、フレームに寄りかかって授業はそれなりに進んでいく。しかし、実際には気付きが少なく、学びも小さいということが頻繁に起こる。この理由は「説明」の不足にあると考える。子供たちが本気で学習するという場所に立たないのである。(中略)
 
従来から重視されてきた「説明」は、「方法の説明」が中心であったと考えている。せいぜい、授業者の「意図の説明」までであったように思う。
 
それももちろん大切だが、今、より重要なのは、「価値の説明」だろう。
 
先生の用意した流れの通りにやっていけばやがてわかるというのではなく、この学習方法、この学習内容、この教材が、なぜ学ぶ必要のあることなのか、それを学ぶことが、学習者にとって(学習者の人生にとって)どんな意義や意味があるのかを、本気で、出来る限りわかりやすく、学習者に「説明」するということになるだろう。
「学び」を、出来る限り本物、実質に近付けていくことに、教師が腐心しなければならない時代が来ていると考える。(引用終わり)
 
この数年のボクのクラスの変化も、なぜ、Beingをするのか。どんな価値があるのかを、ボクの言葉で、何度も、何度も子どもたちに語るようになったから。そして、「価値のインストラクション」を聴いた子どもたちが、日々の学校生活の中でBeingを大切に育みながら、その価値を高めているなあと思います。学びの価値を共有できると、子どもたちが、その価値を高めてゆくのです。
 
日々の学校生活には、どのような価値があるのか。私たちの暮らしや社会、世界、そして私たちの生きてゆく未来にどうつながっているのか。日々の授業の価値を,ボクたちはもう一度、検討し、子ども達にインストラクションで共有する。このことがこれからますます大切になっていくと感じています。
 
最後にボクのBeingの「価値のインストラクション」の一部を紹介します。ボク自身の変化と共に,毎年少しずつ変わっているものです。
  
3,居心地のいいクラスをつくるために
わたしたちは、人とかかわりあって生きています。クラスやクラブ、習い事、いつも遊ぶ友達、家族などなど。いろんなチームに所属しています。社会も一つのチームです。クラスも一つのチームです。4月に新しいクラスがスタートしてから、わたしたちは、みんなで世界一のクラスを目指してドキドキワクワクのチャレンジを積み重ねてきました。頂上はみえてきたかな?
 
一人一人は違う。違うからこそ、おたがいの「強み」を生かし合って、チームワークを大切にして、みんなで成長してきました。ボクもみんなと一緒に成長してきました。クラスでのドキドキワクワクのチャレンジを通して、一人一人が「自立した人」に成長してきています。ボクはそのことがとてもうれしいです。
 
このクラスというチームの中で、ボクたち一人一人が「自立した人」に成長していく。そうすれば、このクラスを離れても、「自立したわたし」として、次の場所で、最高のチームをつくれる。そうなると、このクラスの幸せがどんどん広がっていきます。
 
このクラスでできたことが、次の学年に広がり、学校に広がり、社会に広がり、もしかしたら世界に広がっていくのかもしれません。
 
そう、一人の行動からボク達のまわりの世界はかわりはじめるのです。
   
クラスの一人ひとりが成長し続けるには、このクラスが「みんなが安心していられるクラス」になる必要があります。安心できるから、チャレンジできる。チャレンジして失敗しても誰にもバカにされない、誰かがサポートしてくれる、応援してくれている。そう思えるから一人ひとりが、「リスクテイカー」になって、チャレンジし、そして成長し、「自立」していけます。
 
昨日、友達の力を借りてできたことは、今日一人でできる。励ましてくれる友達、応援してくれる友達がいれば、ボクたちは新たなことにチャレンジすることができ、できることが増えていきます。
     
ボク達は何度もそのことを実感してきました。そんなクラスになるためには、「自分も相手も、お互いを最大限尊重(しあう。大切にしあう)ことが大切。まずこのことを30人で約束しましょう。難しい言葉で「フルバリュー・コントラクト」といいます。ボクたちはできてきているよね。
 
ところで「みんなが安心していられるクラス」「いごこちのいいクラス」は、だれが作るのでしょうか?
 先生?だれか?
 そう、「自分たち」がつくるのです。
 ボクたち一人ひとりがつくるのです。
 
 自分たちが安心できるクラスをつくるために。
 クラス目標を達成するために。
 いや、ボクたちはもう高学年だから、クラスだけではないよね。
 自分たちが安心できる学年をつくるために。
 自分たちが安心できる学校をつくるために。
 自分たちが安心できる社会をつくるために。
 
・自分にできること(こんなことをすればきっと相手は自分が大事にされていると感じるのではないか)
・友達にしてほしいことはなんですか?
 
クラスのために。学校のために。社会のために。「自分たちのために、自分たちがつくる、自分たちの規範」をつくりましょう。そしてそれを,一緒に大切に育てていきましょう!このクラスのオーナーはボクたち一人ひとりです。