いわせんの仕事部屋

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情景を描く。

今年度もいよいよ終わり。学校や学級の一区切りです。ちょっと余韻にひたり、新年度の準備に入ります。ボクが研究主任、学級担任をしているときに、新年度の準備で一番最初にしたこと、それは「情景を描く」ということです。

学級の場合。最も理想的に進んだとしたら、1年後どんな学級になっているとうれしいかを頭の中で「動画モード」で見られるレベルまで具体的にイメージするんです。 とある1日を思い浮かべて、理想的な教室の様子を映画のように思い浮かべます。

・教室はどんな環境だろうか?

・どんな声が聞こえるだろうか?

・何が見えるだろうか?

・どんな学び方をしているだろうか?

・どんなふうに関わっているだろうか?

・先生であるボクはどんなことをしているだろうか?  

・ボクと子どもの関係は?

・子どもと子どもの関係は?

・保護者とボクの関係は?

・同僚とボクの関係は? 等々。

自分に問いかけながら想像していきます。 ありたい未来像を情景として丁寧に描く。言い換えるとビジョンを描くということをします。描いた情景に自分自身がワクワクできたらOK。まだあまりロジカルに考える必要はないとボクは考えています。現実的な制約(制度、学校の文化、規則等々)を考慮に入れて考えるとどうしても描く情景が陳腐になりがち。 まずは徹底的に理想を考えるのが大事です

以下は、ある年にボクが情景を描くときにメモしたものです。 (『せんせいのつくり方』に載せました。)

自分のやりたいことがあること。自分のペースを大事にできること。たとえば休み時間。サッカーに興じている男女もいれば、教室でおしゃべりしている人もいる。歴史で学んだ人物でカードゲームをつくって遊んでいる人がいる。それをニコニコみている人もいる。「一緒にやる?」なんて声をかけている。理科で使った電磁石で実験している人もいる。そのメンバーの組み合わせは日によって違う。自分で選べるんだ。好きなことが違って、得意なことが違って、いろいろな人がいるからおもしろい。そんな開放性とゆるやかさがクラスのベースとしてある。空気圧がゆるいんだ。「だれと」よりも「何を」が優先されている感じ。

困ったら、困ったって言えるクラス。みんなのことをみんなで考えるクラス。うまくいかなかったり、対立が起きたり、そんなことは30人が一緒に暮らしていれば起きてあたりまえだ。そんなとき、一人で困らずに、「しゅうちゃんとケンカしちゃってるんだよね」と友だちに気楽に言える。「じゃあ、間に入って話を聴こうか?」って、友だちがサッと手助けしてくれる。お互いがお互いのファシリテーターな感じ。助けてもらった人も助けた人もうれしい。

 

 クラスに問題が起きることもある。 「最近給食の配膳が遅くてさ、食べる時間が短くなっているんだよね」 「じゃあ、解決策をみんなで考えよう」 自分たちで考えて解決に向かっていく。時には、「両手で食器を運べば速く配れるかも!」なんて、ボクが横で聞いていて「おいおい!」なんて思う解決策が出ることもある。ボクも意見を言ったけど却下。でも大丈夫なんだ。何回か試したら「手がすべてこぼした−!これはダメだ。ほかの方法考えよう!」となった。先生もメンバーの一人だから解決策を子どもたいと一緒に考えていけばいい。失敗してもいいんだ。トライアルアンドエラーで自分たちで解決していくということを大切にしていきたい。

 

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「頭の中で動画モードで再生できるか?」が圧倒的に重要です。どうしてもボクらは「協力できる」みたいな抽象的な言葉に逃げてしまいがち。「それって具体的にはどんなシーンなの?」まで想像することが大切だと考えています。これは大人も子どもも関係なく大事ですね。次に、この情景を元にもう少し抽象的な言葉にしてみます。 こんな感じです。

・人間関係の流動性。困ったときに「困った」と外に表明でき、それをクラスが、「関係の濃さ薄さ」を超えて受け止めてサポートする。それ以外の時は緩やかにつながっている。

・教室の中に複数のネットワークがある。そのときそのときに応じて関係が変わっていく。 複数の回路があれば、必然的にゆるやかな「つながり」となる。

・いろんな人がいてもよい、ではなく、「いろんな人がいるほうがよい」ということを実感するためにクラスで様々な形の実践がある。

・例えば。ブッククラブで「ああ、こんな考え方があるのかあ。社会には自分とは違う考えの人もいるんだなあ」と思うこと。

・算数の時、 「ああ、この人の説明だとわからないのに、この人の説明だとよくわかるなあ。試してみないとわからないものだなあ」と実感すること。 様々な時間に、自分の強みが発揮できること。他者の強みを見て 「へー、自分が苦手なことでも得意な人がいるんだなあ。逆に自分が得意なことでも人には苦手 のこともあるんだなあ」 「自分が役に立てたり、得意なのはここだなあ」 と思えること

・多様な中で、学校は人工的な空間ではあるけれど、 出来る限り自然で自分らしくいられること。 やりたいことがそこにあること。 科学だったり、読書だったり、裁縫だったり、作家だったり、人によっては掃除だったり。ダンスや歌もステキだ。

・たとえば給食の時間にやる算数寺子屋。 「やりたい人はやればいいし、そうじゃないひとは別にやらなくていい」 という緩やかな自己選択があること。 やらなくても不利益にならない開放性。 やっているからえらいとか、やっていないからだめとか、そんなのはない。 どっちもあり。個人の自己選択・自己決定が保証されている。

・学習の個別化の時間にいやそれ以外でも、 「サポートして」と援助を求めることができる。 それが幅広く受け止められる。 受け止められて解決したり、進んだりできる。 その成功体験が、より「サポートして」を言いやすくし、コ ミュニティの問題が早めに可視化されるようになり、健全性が保たれる。

・起きている時間のほとんどを過ごす学校。 今は下校時刻が4;00で、外で遊んでいい時間が4:30まで。 実質かえって友達と遊ぶ時間はない。 子どもたちにとって、学校での時間が友 達と過ごす唯一の場なのだ。 その学校にとって、教室にとって、「居心地がいい」「やりたいことがある」「自 分らしくいられる」というのは以前にも増して重要だ。

・だた、それだけではやはり学びの場ではない。 自分の成長を実感できること。自分の変化、をちゃんと自分でわかっていること。 変わってきているから、これからも変わっていけるだろうという自分へのポジティブな期待。 ただ「居心地がよい」だけではなく、その中での成長実感。 やればできるようになる、というマインドセット。 周りの人や大人がモデルとなり、自分が「伸びようとする高さ」が見えてくること。自分の位置が自分で測れること。

・時間軸が長いこと。 すぐに成果が出たり、変わったりしないこともある。 いつでも長い時間軸を意識して焦らないこと。待つこと。 1年単位での実践ではここへの意識がよわくなる。 気をつけよう。 ボクがグッと伸びたのは、教員になってからだぞ。子ども時代は遊んでばかりだ。

・他のクラスや学年との「バリア」ができるだけないこと。 そのためには。一緒にやれることを増やすこと。子どもが行き来するしかけをつくること。 例えば本を借りに行ったり。クラスを混ぜた授業をしたり。担任が授業を交換したり。 ここはまだあまりやれていないから、これから意識していこう。 ああ、そのバリアは、学校の中と外、にもあるんだよな。 そのバリアをなくしていきたい。

・クラスというコミュニティを居心地よく、よりよいものにしていくのは、わたしの手の中、にあること。 わたしの一歩がそのきっかけになる、ということが実感できること。

・違いを前提に、共創的な対話を重ねられること。 対話をあきらめないこと。

 

この作業、実はとっても楽しいです。 だって「最も理想的でワクワクする状態」をイメージするのですから。こうやってメモがき増やしていくうちに、コンセプトが見えてきます。(この年は、「適度な一体感とバラバラ感。空気圧の低いコミュニティ」という言葉にまとまりました。)

ここまで描いてから、「では現実的な制約の中、できればそれらを味方につけつつ、具体的にどう進めていこうか?」と具体的な実践レベルの作戦を考えていきます。 ボクはつい「よし!今年はサークル対話をやるぞ!」みたいに方法から発想してしまいがち。これをやりすぎて、「方法のパッチワークのような実践」になってしまったこともあります。まずは具体的な情景を描き、そこから大切にしたいコンセプトを探究していく。

これは校内研究の研究主任をやったときも同じでした。 最初の研修で皆さんと考える問い、それは、 「1年後、この会議室での研修がどうなっていたら、『あー!この1年の研修やってよかったなー!楽しかったな−!自分たちの力になったな−!』って思えるでしょうか。ちょっと映画みたいに想像してみましょう。」 です。はじめから情景を共有することは難しいけれど、日々の研修の中で、「ああ、これっていいなあ」というシーンを情景に足していく。そうやって情景をみんなで豊かにしていくプロセスこそが大事だと思います。

学校レベルでも実はこの情景の共有が行われていないのではないでしょうか?学校経営方針や学校教育目標。その言葉から、一人ひとりのノーミソに描かれている情景は全然違うかも知れない。だから共通目的を目指しているはずなのに、どこかずれていってしまう。 まずは一人ひとりの頭の中にある情景を言葉にし合う。共有する。にお互いが共感できる「共有ビジョン」を築いていく(センゲ2014)。このプロセスを全員で行うことがとても重要だと考えています。

残念ながら今の多くの学校は、4月になると怒濤のように新学期準備に追われてしまい、この時間がとれません。立ち止まる暇もなく事務作業に追われます。始まりのワクワクを耕す前に疲労困憊します。だがしかし。スタートだからこそ丸1日間取って、じっくり学級、学校の情景を描き、共有しあう時間が必要じゃないかなあと思うわけです。

 

蛇足ですが、よりよい情景を描き、そして実践していけるようになるために、ボクらはだから学び続けるのだと思います。自分の知っていること、経験したことの範囲はたかがしれています。そこからだけの出発にならないためにも、ボクらは本を読み、学び、見る。自分の「そもそも」を問い直し続ける。それは実は楽しいことだと実感しています。あらたな「情景」を描けるようになるのですから。

 

 

最後に軽井沢風越学園。 本城さんとボクは、最初に学校のコンセプトを話し合うことからスタートしませんでした。それぞれがノーミソの中で描いている情景、学校の姿、子どもの姿、大人の姿を描いていっていきました。お互いが描いた情景を思い浮かべつつ、自分の情景と合わせて共有できる情景へと描き直していく。まず2人でこの作業をまるで文通のようにはじめました(メールだけど)。

そこに苫野さんが加わり、小川さんが加わり、初期メンバーで描き合いました。その中からコンセプトが少しずつ見えてきたのです。

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それがホームページにある設立メッセージです。 情景は、これから増えていくメンバーとさらに情景を色鮮やかに描いていくつもりです。 開校までにどんどん変わっていくでしょう。

開校してからもどんどんかわっていくはず。

  

卒業おめでとう。

 

大学院の修了式が終わりました。

言いそびれてしまった言葉を。

 

創り出すことを楽しんでほしい。


楽しいということはものすごく大事です。


教員になっていく中で、

楽しいことは

「置いておいて」といわれるかも。

でも。

 

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おもしろくないことを、
「どうやっておもしろくするか!」
ということを、全力で考えながら生きていってほしい。ボクらの手の中にコントローラーはあります。

 

 

制度の縛りは、創造力の源です。

制限があるからこそ、ボクらは工夫し、新たなものを生み出せます。

制限を楽しみましょう。


ゆかいな大人で居続けましょう。

 

修了、おめでとうございます。

ここからは同志です。

多くの子どもに届けましょう。

大人であるボクらが楽しんで学び続けている姿を。

 

『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』はオススメです。

魅力的な本が出版されました。

ようこそ,一人ひとりをいかす教室へ: 「違い」を力に変える学び方・教え方

ようこそ,一人ひとりをいかす教室へ: 「違い」を力に変える学び方・教え方

  • 作者: C.A.トムリンソン,山崎敬人,山元隆春,吉田新一郎
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 2017/03/17
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

待望の翻訳です。(友人の秋吉理恵子さんによるとチョー有名人だそう)。

ボクはゲラの段階で下読みの協力をしました。

 

この本の核は、「Differentiated Instruction:DI」。
この「Differentiated」を「一人ひとりをいかす」と訳したのが見事。

端的に言えば、「学習の個別化」の具体が書かれている本です。
ようやくこの本が日本語で読めるようになりました。
これを読むと「学習の個別化って具体的にどうやればいいんだろう?」という疑問から実践への道筋が見えるはずです。

どうしてもボクらは「どうやったらできる?」と方法に意識が行きがちですが、「一人ひとりをいかす教え方」(Differentiated Instruction)は方法ではないといいます。

「〜それは(一人ひとりをいかす教え方:引用者注)教えるときに自分がすることすべてと生徒が学ぶときにすることすべてについての考え方」(p181)なのです。言い換えると、
「〜一人ひとりのそのときの実態から始めることが大切だと主張する、教えることと学ぶことについての考え方」(p203)です。
この考え方というところはとても重要です。

これからの学校での学び方を考える上での出発点にしようということ。

 

実は私たち一人ひとりは学ぶペースも、得意な学び方も、学習履歴も、興味関心も違います。とはいっても一人ひとりの違いに対応していたら授業は成り立たないのではないか?ボクらはそう思ってしまいがちです。

 これまでの日本の学校教育は一斉授業が主でした。石井英真さんがいうように「練り上げ型の創造的な一斉授業」が理想とされ追求されてきたのです。この豊かな蓄積がこの国の教育を長く支えてきました。

 質の高い一斉授業について、「かつては教師のアート(卓越した指導技術)と強いつながりのある学習集団により、クラス全体で考える意識をもって、発言のない子どもたちも少なからず議論に関与し内面において思考が成立していた」とも石井さんは述べています。

「アクティブ・ラーニング」を生かしたあたらしい「読み」の授業:「学習集団」「探究型」を重視して質の高い国語力を身につける (国語授業の改革)

「アクティブ・ラーニング」を生かしたあたらしい「読み」の授業:「学習集団」「探究型」を重視して質の高い国語力を身につける (国語授業の改革)

  • 作者: 「読み」の授業研究会,阿部昇,加藤郁夫,永橋和行,柴田義松
  • 出版社/メーカー: 学文社
  • 発売日: 2016/08/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 (この本に載っている石井さんの論文はおすすめ。ではこれからの授業は何を大切にしていくのかが明快に述べられています。これ読むためだけに買っても惜しくない)

 

しかし多くの授業では、ある子にとってはわからないまま進んでしまったり、ある子にとっては既にわかっていることを聞く退屈な時間、ということが起きています。 今の小学校の教室は、実はやり直す機会の少ない場です。授業が前学年、いや前時までのことを「みんなが理解している」という前提で進んでいくことが多いのですが、ちょっと考えてみればわかるように、これはフィクションに過ぎません。

 算数を例に取れば、四則計算の段階で困っている子、今日の学習内容はとっくに終わっている子、そもそも「座って聞く」という学び方が苦手な子、一人一人の学び様相は本当に様々です。学ぶペースも、学び方も、興味・関心も人によって異なっているのは、考えてみれば当たり前のことです。

 実は私たち教員は薄々そのことに気づいていながら、進めざるを得ません。やり直すチャンス、戻るチャンス、進むチャンスが保証されていない一斉授業は、「標準ペース」で進んでいくのです。

 そのペースに乗り切れなかった子は、緩やかに学習から遠ざかっていきかねません。格差をなくすための学校が格差を生んでしまう矛盾がおきるのです。 学習は本来個別的で、一人一人ペースやスピードが違うものです。

 一斉授業自体が問い直される機会は、1980年代の愛知県東浦町立緒川小学校に代表される個別化・個性化教育のような例はあるものの、あまり広がりませんでした。

しかし、本当に一人ひとりの違いに対応する学び方は不可能なのでしょうか?
それはできる!というのが苫野一徳さんがいう「学習の個別化・協同化・プロジェクト化の融合」ですし、この本で提唱されている「一人ひとりをいかす教え方」です。

詳細はぜひ本を手に取ってみて下さい。

この本は支えとなる考え方と原則がわかりやすく整理されていると共に、具体的な実践事例や方法も載っています。特に7章の「課題リスト」(Agendas)は、ボクが現場で実践してきたことにきわめて近く(やはり先人はやっているものですねえ…)、「複合的プロジェクト」(Complex Instruction)、「周回」(Orbital Studies)は、これから軽井沢風越学園のカリキュラムを考えていくときの参考になりそう。ブッククラブも紹介されていて、リーディング・ライティングワークショップも視野に入っているのがわかります。

一人ひとりの違いをどうアセスメントするかについても具体的なで提案があり、また、「いきなり大がかりに始めるのは難しいなあ…」という人のために9章の182頁からは「小さく始める」方法まで提案していて、至れり尽くせり。

現場のことをよくよくわかっているからこその親切なつくりです。

 

具体的な教室での実践をイメージしながら読了。実現したいことが山のように出てきました。日本語で読めることに感謝感謝。

この本と併せて読むとその価値がさらによくわかります。

 

学びのイノベーション――21世紀型学習の創発モデル

学びのイノベーション――21世紀型学習の創発モデル

  • 作者: OECD教育研究革新センター,有本昌弘,多々納誠子,小熊利江
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2016/09/22
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 それにしても吉田新一郎さんの紹介する本には外れがないなあ。

しみじみ。

 

目次は以下の通り。

まえがき

第1章 一人ひとりをいかす教室とは?
 一人ひとりをいかす教室の特徴
 さまざまな学校からのポートレート

第2章 一人ひとりをいかす授業を実践するための八つの原則
 一人ひとりをいかす教室の本質~八つの原則
 一人ひとりをいかす教室をつくるための三本柱
 一人ひとりをいかす教室の哲学

第3章 学校でのやり方と、そもそも誰のためにしているのか
    を再考する
 教育の変化
 教えることと学ぶことに関する現時点での四つの理解
 私たちが教えている生徒のことについて考える
 私たちが知っていることとやっていることのギャップ

第4章 一人ひとりをいかす教育を支援する学習環境
 学習の三角形としての指導
 健全な教室環境のさまざまな特徴

第5章 よいカリキュラムは一人ひとりをいかす授業の基本
 「ねらいのはっきりしない」授業
 持続的な学習のための二つの重要な柱
 学習のレベル
 意味のある方法で到達基準を扱うこと
 学習レベルの典型例
 カリキュラムの要素
 学習のレベルとカリキュラムとを合わせること
 カリキュラム-評価-教え方の関連

第6章 一人ひとりをいかすクラスづくりをする教師たち
 一人ひとりの「何を」「どのように」「なぜ」いかすのか
 知識ないしスキルに焦点を当てた一人ひとりをいかす教え方
 概念ないし意味を基本に据えた一人ひとりをいかす教え方

第7章 一人ひとりをいかす多様な教え方
 コーナー
 課題リスト
 複合的プロジェクト
 周回

第8章 一人ひとりをいかすもっと多様な教え方
 センター
 多様な入り口
 段階的活動
 契約
 三つの能力
 一人ひとりをいかす学びを可能にする他の方法

第9章 一人ひとりをいかす授業を可能にするクラスづくり
 学校のイメージ
 まずは始めてみよう
 長いつき合いを覚悟する
 具体的な注意点
 サポート体制を構築する

第10章 一人ひとりをいかす教室づくりの促進者としての
    リーダーたち
 学校変革にまつわるこれまでの経験と研究成果
 初任教師についての一言

 あとがき
 資料 一人ひとりをいかす授業の計画づくりをする際のツール

 

 

お料理は楽しい。

学校でお料理。料理っていろんな要素が入っていて、ゴールもはっきりしている。

「自分たちで何とかする」のがなんとも楽しい。

小さなプロジェクトと言えます。

学年末の残り少ない日、最後のチャレンジにみんなでお料理なんてどうでしょうか。

ボクはかつてテレビでやっていた「料理の鉄人」(古い)が好きでした。

最近でいえば「ビストロスマップ」(古い)。

学校で行うお料理もこんな感じの「お料理対決」にしていました。

以下は6年生での実践です。振り返りジャーナルの機能も伝わるといいなと思います。

 

        *  *  *

 

今日は第3回のクッキングコンテスト。
クラスの友達に感謝の気持ちを込めつつ、テーマは「デザート」。
ぴったり60分で完成です。

 

計画も、買い物も、会計報告もすべて自分たちで行います。
昨日は近所のスーパーで、何グループも遭遇したようです。
「卵たくさんはいらないから、2グループで半分ずつお金出し合って買ったんだ」
うん、カシコイ消費者です。

とってもおいしい、幸せな時間でした。

それにしてもクオリティ高かったなあ。

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ブッシュドノエルまであったのには驚きました。

 

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すべて終了後、数名が家庭科準備室に残っていました。
「どうしたの?」
「洗剤が空っぽになっていたから補充しておいたの。
 来年の高学年、入ってないと困るだろうし」
「そっかあ。ありがとう!」

こういう小さな心配りはいいなあ。
そういえば、片付けもチームに関係なく自然にやっていました。

いよいよ卒業まであと5日、です。

 

★振り返りジャーナルより★


楽しみにしていたクッキングコンテストが終わってしまいました・・。

でも今回でやっといい結果が出せそうです!やっと・・・・ホントにやっとです。1回目は大根が飾ってあった班で最下位。2回目は○○と○○と○○との班でじゃがいもを使ったものの、ビリから2番目とさんざんな結果でした。でも今回こそ!と燃えていろいろなアイデアを出し、協力し合ってなかなかいいふうにできました。もしかしたら・・・初めて1位とれるかも!とれたらみなさん拍手を!!
昨日3時間かけて準備したんだもん。本当によかった。
でも○○(注:風邪で欠席の子がいました)ともいっしょにやりたかったなあ。
大丈夫かなあ。お大事にね。
で。今日私はみんなの協力ができたこともよかったって思う。自分たちの班の片付けが終わった後も、「椅子の回収屋さん」と「かたづけ屋さん」と「おそうじ屋さん」の3つになってお仕事。あ、これは勝手につけた名前です(笑)。ちゃんとお仕事できたと思う。
あー今おなかいっぱい。
どの班のもおいしかったなあ。4班のクレープもおいしかった。でも1位は私たち!みなさんよろしく!
明日の結果が楽しみだな。

1つ1つが終わっていく。明日の朝マラソンも燃えるぞ!
明後日はブッククラブがラスト。
1つ1つを大切にしていきたいね。

あと5日!
よろしくね、イワセン!

 

 

振り返りジャーナルは先生にとっても大切。

本ができました。

 

「振り返りジャーナル」で子どもとつながるクラス運営 (ナツメ社教育書ブックス)

「振り返りジャーナル」で子どもとつながるクラス運営 (ナツメ社教育書ブックス)

 

 ボクの実践群の中で、信頼ベースの学級ファシリテーションとして整理したもののなかで、最も広がっているのがこの振り返りジャーナルかもしれません。

ボク自身はこの振り返りジャーナル抜きで日々の実践は成立しない、と断言できるほど核となっているものとなっていました。

 

一方、なかなかうまく行かないという相談が一番多かったのも、この「振り返りジャーナル」です。

その声に応えるべく整理したのがこの本です。

さっそく、あすこまさんが書評を書いてくださいました。

askoma.info

あすこまさん、ありがとうございます。

「教室という権力空間で、教師が生徒に振り返りを書かせる」ことに対する懐疑

と書かれていますが、そこ、大事ですよね・・

この実践が子どもにとっても教員にとっても価値のあるものになるためには、教員が自身と学校の権力性を自覚しつつ、その権力性を何に使うのか。

そこが問われます。

その問いは「なぜ先生宛に書くのか?」という問題にもつながっています。

他者と振り返りを共有するときに、その両者の間に必要な関係性とはどのようなものか。学習者である子どもが真摯に振り返りに向き合えるには、その伴走者である教員はどうあるべきか。このあたりはあすこまさんも言及してくださっています。

そう考えると「振り返りジャーナル」は、やり方を越えて、教員自身の「あり方」こそが問われているのかも知れません。その意味では、「わたし」の有り様が可視化されるツールなんですね。

そう考えるとちょっとこわくなりますよね。

ボクも若い頃、

「いわせんのこと、いい先生だと思うけれど、好きにはなれないな」

って書かれて、なかなか整理がつかなかったことがあります…

でも今思うと、それをきっかけにボクは「子どもとの関係性」についてよくよく考えるきっかけとなりました(その時はダメージ受けたけれど…)。ジャーナルというツールがあってよかったなと思うエピソードです。

 

でもよく考えれば、自身のあり方を振り返る視点を毎日得られるわけですから、ジャーナルを読んで、ボクら自身も振り返ることで、ボクらにとっても成長のツールになります。

子ども→先生→子ども→先生・・・というサイクルが回って初めて、両者の成長につながるのが「振り返りジャーナル」です。

 ボクの成長を支えてくれたのは、この振り返りジャーナルでした。

 

昔からの実践の仲間、青山さんも書評を書いてくださいました。

aosenn.hatenablog.com

実践してきて、その難しさを知っているからこその書評に感謝。

 

「振り返りこそ学び」は、大人も子どもも同じですね。

さあ、今日の振り返りを書こうっと!

 

 

最近読んだ本。これから読む本。

すっかりブログをご無沙汰してしまっていました。

仕事が忙しくて(言い訳)。復活します。

今日は久々、最近読んだ本を紹介します。 

アメリカの教室に入ってみた: 貧困地区の公立学校から超インクルーシブ教育まで

アメリカの教室に入ってみた: 貧困地区の公立学校から超インクルーシブ教育まで

 

★★★★★

大当たりです。必読です。アメリカの貧困地区の公立学校のルポもさることながら、新しいインクルーシブ教育を展開している私立小学校の紹介を通じて、「インクルーシブ教育の新しいかたち」が提案されている本。 

ボクは特に第3部にしびれました。

第3部 インクルーシブ教育の新しいかたち

第1章 小さな私立学校とインクルーシブ教育
第2章 New Schoolの概要
第3章 流動的異年齢教育
第4章 流動的異年齢教育を可能にするもの─個別化・協同化・プロジェクト化
第5章 流動的異年齢教育の意義
第6章 インクルーシブ教育の新しいかたち─違いを大事にしながらつながる

 ボクらが軽井沢風越学園で実現しようとしていることとの共通点の多さにも驚きました。現地の情景が浮かぶ読みやすい文体。一見軽いタッチの文章の中に、本質的な問いが浮かび上がってくる。現在の日本のUDへの批判も柔らかく、でも鋭く練り込まれている。いやあ、すごい本だ。

近々お会いしたい方ナンバー1です。

 

ゼロから学べる道徳科授業づくり

ゼロから学べる道徳科授業づくり

 

 ★★★★★

荒木さんからご恵送いただきました。(ありがとうございました!)

これまたすごい・・・ゼロから学べるシリーズでも異彩を放っています。

そもそも道徳とは?道徳教育とは?という理論からスタートし、道徳教育の歴史、そして実際の授業づくりまで網羅的に取り上げられています。

一つ一つが知見に裏打ちされていて、荒木さんの授業を受けているような読後感。

わかりやすいのに奥深い。

前述の赤木さんの本とこの本は「研究者による、現場の先生に届く書き方での新しい形」と言えます。この流れは歓迎したいです。

お二人とも現場に精通した(実践もされている)研究者だからこそなのでしょう。

道徳を学びたい!学び直したい!という方に最適の1冊です。井上ひさしのことば、

むずかしいことをやさしく、

やさしいことをふかく、

ふかいことをおもしろく、

おもしろいことをまじめに、

まじめなことをゆかいに、

そしてゆかいなことはあくまでゆかいに

 が浮かぶ2冊。

この本の次は、同じく荒木さんの本、

 をお薦めします。ボクはこの本に多大な影響を受けています。

 

リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは

リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは

 

 

 

監督に期待するな 早稲田ラグビー「フォロワーシップ」の勝利

監督に期待するな 早稲田ラグビー「フォロワーシップ」の勝利

 

 

 

指導者の「指導者」が教える先生の力を最大限に引き出すメソッド

指導者の「指導者」が教える先生の力を最大限に引き出すメソッド

 

 とある本の企画で中竹さんと対談させていただく機会があり、その予習に読みました。自身との共通点も多く、刺激的な時間でした。

ご自身の実践を言語化し体系立てる力がすごい方。

暗黙知を徹底して形式知に落とし込み広げていく。大事な仕事をされている方です。

スポーツのチームと学校との共通点と違いは何かを改めて考える機会にもなりました。

 

好奇心のパワー: コミュニケーションが変わる

好奇心のパワー: コミュニケーションが変わる

  • 作者: キャシータバナー,カーステンスィギンズ,Kathy Taberner,Kirsten Siggins,吉田新一郎
  • 出版社/メーカー: 新評論
  • 発売日: 2017/02/08
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

★★★★

吉田新一郎さん訳の最新刊。彼の目利き力には脱帽です。子どもとの(に限りませんが)コミュニケーションを再考したい人にお薦めです。この本に書かれていることを実践すれば、確実に変わっていくと思います!

 

無藤 隆が徹底解説 学習指導要領改訂のキーワード

無藤 隆が徹底解説 学習指導要領改訂のキーワード

 

★★★★

読みやすいので、1時間もあれば全体像がつかめます。答申と合わせて読みたいです。

 

今日届いた本は以下の2冊。さあ読むぞ-。

  

真正の学び/学力 質の高い知をめぐる学校再建

真正の学び/学力 質の高い知をめぐる学校再建

 

 ↑

この本まだチラ見ですが、大当たりの予感。高いのが難点。

 

 

新しい本が出ました。

新しい本が出ました。 

「振り返りジャーナル」で子どもとつながるクラス運営 (ナツメ社教育書ブックス)

「振り返りジャーナル」で子どもとつながるクラス運営 (ナツメ社教育書ブックス)