いわせんの仕事部屋

Mailは「naoki.iwase★gmail.com」です。(★を@に変えてください。スパム対策です)

振り返りにフィードバックするときの「問い」とは?

 振り返りの大切が強調されて久しい(当社比)ですが、そうはいっても内省を深めるのってとても難しいです。自分の振り返りには、自身の経験から出来上がった無意識の信念や価値観「思考のクセ」のようなものがあり、そこを基点に自動的に判断したり解釈してしまうことが多々あります。「自動的」というのがこわい。よって、いつも「同じ落とし穴に落ちる」ことになりかねません。

 自動化=悪いことではありません。専門性が高まるというのは、ある意味「質の高い自動化」が増えることでもあります。しかし、ショーン(2007)が指摘するように、

(専門性の高まりは)マイナスの効果をもたらすことがある。 ひとりの人間の中で専門分化の程度が高度になると、視野が狭くなる可能性がある

 

わけで、自動になっているところを意識化して「ほんとうにそれでよいのか?」を検討する必要がありそうです。

省察的実践とは何か―プロフェッショナルの行為と思考

省察的実践とは何か―プロフェッショナルの行為と思考

 

 とは言っても無意識なので気づきにくい。ですから、「他者からフィードバックをもらう」ことが重要になるわけです。とはいえ、他者が「そこは違うと思う!」などとフィードバックすると、

「なにを!!!」と心のシャッターが閉店ガラガラ〜になりかねません。フィードバックが「フィードアタック!」になるわけです。ボク割と得意です(涙)。ではフィードバックする側はどうすればよいのでしょうか?

その時の1つのヒントとして、「質問」を活用する、がありそうですす。

 

★内省や気づきを促す問い

例えば、メリアム(1998/2004)の研究では、内省や気づきを促す有効な質問として以下の4つをあげています。

①仮定的質問:「もし〜だったら」ある自体を推測する

②故意の反対の立場からの質問:「〜という人がいるけれど」とあえて相手と異なった立場を提示してその反応から深めていく

③理想的質問:理想的な状況を想像してもらい語ってもらう

④解釈的質問:暫定的な解釈を示してその妥当性を確認する 

例えば振り返りに、子どもとのあるやりとりとその結果が書かれていたときに、「もしそこで叱らずに〜したら、どうなっただろう?」のように聴いてみる。褒めるのが大事だ-!を信じて疑わない場合、「ほめることが、かえってって先生への依存を生むっていう人もいるけれど、今回の場合それについてどう思う?」と聴いてみる。「最も理想的に進んだら、今日の出来事はどうなっていればよかったの?」「そのためにどんなことができただろう?」と聴いてみる。「今話していること(書かれたこと)って、〜っていうことでいいかな?(少し抽象化して整理)。それを改めて眺めてみると、あらためてどう考える?」とちょっとメタに見直してみる。どんな質問をするか、はかなり重要そうです。どれも、ちょっと引いて眺めてみる(メタに見直してみる)質問です。フィードバックする人の重要な役割と言えそうです。

 

★オープンクエスチョン

ちょんせいこさんと提案している「信頼ベースの学級ファシリテーション」の中にオープンクエスチョンがあります。振り返りは実は具体的に深まっていずに、表層的な事象で慌てて解釈している場合も少なくありません。そんな場合は、まずはオープンクエスチョンで階層を深めて具体的エピソードまでを言語化することが有効です。浅い階層での振り返りは浅い気づきになりかねません。オープンクエスチョンでまず深める。これが大事です(実感)。

よくわかる学級ファシリテーション?―子どもホワイトボード・ミーティング編― (信頼ベースのクラスをつくる)

よくわかる学級ファシリテーション?―子どもホワイトボード・ミーティング編― (信頼ベースのクラスをつくる)

 

 

元気になる会議-ホワイトボード・ミーティングのすすめ方

元気になる会議-ホワイトボード・ミーティングのすすめ方

 

  ★コルトハーヘンの8つの窓 

コルトハーヘンのALACTモデルは、本を参照していただくとして、

教師教育学―理論と実践をつなぐリアリスティック・アプローチ

教師教育学―理論と実践をつなぐリアリスティック・アプローチ

  • 作者: フレットコルトハーヘン,Fred A.J. Korthagen,武田信子,今泉友里,鈴木悠太,山辺恵理子
  • 出版社/メーカー: 学文社
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 単行本
  • 購入: 2人 クリック: 11回
  • この商品を含むブログを見る
 

この本の中で振り返りを促す8つの質問として以下をあげています。

自分は何をしていたのか?(DO)
自分は何を考えていたのか?(THINK)
自分はどんな感情をもっていたのか?(FEEL)
自分は何をしたいのか?(WANT)

相手は何をしていたのか?
相手は何を考えていたのか?
相手はどんな感情をもっていたのか?
相手は何をしたいのか?

 これまでの自身の振り返りや何人かの方の振り返りの伴走をさせていただく中で、意外と抜ける視点は「相手は」です。学校文脈で言えば「学習者」視点から振り返ってみること。例えば、

「その時、相手の子どもはどう感じていたんだろう」

「その時、子どもはどんなことを考えていただろう?」

と聞くことで、自身の振り返りに新たな視点がもたらされます。

 

以上、振り返りを深めるための「問い」について考えてみました。これらは、先日の横浜市立永田台小学校での校内研修の中でお話ししたこと、実演したことのバックボーンにあった内容を簡単に整理してみたものです。どんな質問が相手の内省を促すか、という視点は「自身の内省を深めるためにどんなセルフクエスチョンが有効か」という視点にもなりそうです。

学校現場(にかぎらず)において、これらを意識しつつ「振り返りに相互にフィードバックし合う関係」が作れると、相手の振り返りへの貢献ができると共に、自身の振り返りも深まりやすくなり一石二鳥!だと思っているのですが、どうでしょうか。ただここで考えなくてはならない問題は「宛名」問題です。誰かに読まれること前提の振り返りは潜在的に読者を抱えます、それが振り返りに与える影響は考えなくてはならないテーマですが、またそれは改めて。

なお、コルトハーヘンについては、中原さんのブログに要点が見事にまとまっています。

NAKAHARA-LAB.NET 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する: コルトハーヘン先生による「リフレクション学」スペシャルワークショップが終わった!:リフレクションという名の「詰問」「教え込み」「だらだらトーク」を超えて!

さあ、仕事に戻ろう。