いわせんの仕事部屋

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問いを捻り出す 問いが生まれる

プロジェクト学習を実践する上で、いきなり

「さあ、では一人ひとり問いをつくりましょう」

というアプローチがあまりに多い。それで見つかれば苦労しない。

誰でもすぐに卒論や修論が書ける。

問いはそう簡単に決められるものではないので、思い入れのない、形式的な問いを置いてしまいがちだ。

「なぜ原油の価格は上がり続けているのだろうか」

とか捻り出しても自分の関心とつながっていないと、意味のない(言い過ぎか)調べ学習に終始することになる。

 

問いは学んでいくプロセスで自然に生まれてくるもの。

一人ひとりに自然に問いが生まれてくるようなテーマや学習材との出会いのデザインが重要だ。

これを「アンカーイベント」という。

 

アンカーイベント

関心を始動させ、動機づけを促進するための出来事や事象、経験。アンカーイベントは、学習者が関心を持ち、深く課題に取り組むきっかけとなるものである。

 

実世界の問題や状況を反映:実際の生活や職場で遭遇するような問題や状況をベースにする。これにより学習者はその問題を解決するための知識やスキルを獲得する動機づけが生まれやすい。

 

複雑さ:単純な答えが存在しない複雑な問題を提示。学習者を深く考えさせ、多角的に問題を解決するための方法を模索しやすくなる。

 

関連性:学習者の興味や経験に関連する内容であることが望ましい。これにより、学習者は自らの経験や知識を活かしながら学習に取り組むことができる。

 

 

良質な共通経験(=アンカーイベント)をいかにデザインし、そこから一人ひとりに問いが生まれる道筋を設計し実践する。

 

たとえば、昨年度風越学園の34年生で行われていたテーマプロジェクト、

光を使って、わたしの暮らしを『__』。

光を材にしたプロジェクトだ。

 

だからといって「光で不思議だと思うことを発表しましょう」とか、

「光でウェビングを描きましょう」とかからは入らない。そりゃそうだ。

 

では、アンカーイベントとして、たくさんのアンカーイベントを用意した。

例えば理科で、
① ろ う そ く に 火 を 灯 す 、 炎 の 観 察
② 回 路 づ く り ( 豆 電 球 を つ け る 、 プ ロ ペ ラ を 回 す )
③ 虫 眼 鏡 で 光 を 集 め る
④ 反 射 を 使 っ て 光 を 集 め る(鏡でショコラを溶かしてみる)
⑤ プ ラ ネ タ リ ウ ム ( 月 と 星 )

図工で、

① 光 と か げ で 遊 ぶ 、 も の づ く り
② 太 陽 光 と 影 ( 木 も れ 日 キ ャ ッ チ )

ライブラリー
・ ブ ッ ク ス タ ン ド  → 本 を 通 し て 、 光 を 知 る ・ 考 え る 。

など。

これだけ徹底したアンカーイベントを経験し、光への関心を広げ深めていく。

(詳しくは以下の本を読んでみてください。その経験が一人ひとりの探究にどうつながっていくかわかると思います)

https://www.valuebooks.jp/bp/VS0058752973

 

そのたっぷりとしたい経験の中で、関心が滲み出てくる。

一人ひとりに問いが生まれてくる、「〜したい」が訪れる。

それは決して捻り出すものではないはず。サイクル通りのぐるぐる回るものでもない。

生まれた問いや「〜したい」は自分ごとだ。そこから探究ははじまる。

 

例えばこんな学びが生まれていく。

kazakoshi.ed.jp

 

なるほど、と頭でわかっても、そのようなプロジェクトを設計したり実践したりするのはなかなか大変だ。

 

今回、風越では、子どもの『やりたい!知りたい!』が生まれ続けるテーマプロジェクトの設計と伴走について学べる機会「実践ラボ」を行います。
関心がある方はぜひ。

kazakoshi.ed.jp

 

ちなみにプロジェクト学習の設計の勘所としては、「教科の内容を豊かに内包するには?」(そもそも学ぶ意味や価値があるものが教科の中にある。それを生かした方がプロジェクト学習はより豊かになる。逆を言えばそれが薄いと活動主義になりやすい。)もそのひとつで、今回の実践ラボではそこにも迫れそう。

というわけでブログ復活してみました。