プロジェクトって、つまりはなんでしょう?
今日、事務所でスタッフのうまっちと話題になりました。その場でもちょこっと話したのですが、帰りの車の中でぼやーっと考えたことがあったので、帰ってきてエイヤとまとめました(なんせ1時間40分もかかるので、考える時間が無限に・・・・)
探究の学び、プロジェクトの学び、PBL、言い方はいろいろありますが、ここではプロジェクトとしておきます(正確にはプロジェクトは探究の方法概念)。
プロジェクトってなんでしょう?
藤原さとさんがブログの中で引用していますが、『理解をもたらすカリキュラム設計』ではこんな事例を載せています。
(この本はプロジェクトをデザインするには必読。必要なインプットなしにプロジェクトをつくるのはかなり困難。)
秋になると毎年2週間、第3学年の児童全員が、リンゴについての単元に参加する。3年生は、このトピックに関連する様々な活動に取り組む。言語化では、ジョニー・アップルシードについて読み、その話を描いた短編映画を見る。彼らはそれぞれリンゴに関わる創作物語を書き、テンペラ絵の具を使って挿絵を入れる。美術では自動は近くの野生リンゴの木から葉っぱを集めてきて、巨大な葉っぱ模様のコラージュを作り、3年生の教室に隣接する廊下の掲示板に掛ける。音楽の教師は、子供たちにリンゴについての歌を教える。科学では、違うタイプのりんごの特徴を、五感を使って注意深く観察して描く。数学の時間、教師は3年生全員に十分な量のリンゴソースをつくるために、レシピの材料を定率で倍にする方法を説明する。・・この単元のハイライトは、近所のリンゴ農園への見学旅行である。そこで児童は、リンゴジュースが作られるのを見てから、荷馬車での遠乗りに出かける。単元における山場の活動は、3年生リンゴ祭りという祝典である。そこでは、保護者はリンゴの衣装を着て、子どもたちはそれぞれのステーションを順に回って、様々な活動を行うーリンゴソースを作り、リンゴの言葉探しコンテストで競い合い、リンゴ採り競争をし、リンゴに関する文章題を内容とする数学のスキル・シートを完成させる。その祝典の締めくくりには、カフェテリアの職員が準備したリンゴあめをみんなが楽しんでいるところで、選ばれた児童が自分の書いたリンゴの物語を読む。
これはプロジェクトではありません。活動主義のテーマ学習です。活動的であるかどうかではないんですね。
「では子どもが問いを立てたら探究になるのではないか?」
という声が聞こえてきますが、それも違うと私は考えています。
例えば「昆虫」とテーマが設定され、
「自分の探究してみたいことを探究しよう!」
などと投げ掛けられ、
「まず自分の調べたいことで問いを作ろう」
「えっと…昆虫は何種類いるの?」
「クモは昆虫なの?」
と調べたいことを設定し、調べて、模造紙に書いて発表。これではプロジェクトとしては不十分だと私は考えます。プロジェクトという名の調べ学習、テーマ学習に過ぎません。これが「天気」でも「たいよう」でもおなじこと。
ただ「これで知りたいことを問いにしましょう」ではダメなんですね。
学習者が探究したいものを!といいつつ、その構造は丸投げになってます。
PBLばやりで、ネコも杓子もプロジェクト!となりかねない状況。でも、気付いたら「自分で」立てた問いの「調べ学習」に終始してしまいかねません。
ではプロジェクトとプロジェクトじゃないものを分かつ条件とは?
さとさんは、ブログの中で端的に
「『探究』とは何等かのサイクルを回すということ、起点から何らかの経験を経て、変化が起き(Transform)、新しい状況へ到達するということ」
とまとめています。探究でこれ以上わかりやすいまとめはない!必読。
さとさんに刺激を受けて、『学習科学ハンドブック』を参考に、私も独断と偏見でまとめてみたいと思います。
学習科学ハンドブック 第二版 第2巻: 効果的な学びを促進する実践/共に学ぶ
- 作者:R.K.ソーヤー,R. Keith Sawyer
- 出版社/メーカー: 北大路書房
- 発売日: 2016/10/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
このシリーズも必読ですよー。
□探究を駆動させる力強い問いがある。
→これは学習者が立てた問いか、教師が立てた問いか、ではなく、学習者自身が自分ごとに感じる問い、解決したい!〜したい!と情熱が生まれる問いであること。
□自分にとっても、社会にとっても重要で意味のある問いであること
→これ重要。意外と「自分にとって重要な問い」でないことが多く、「無理やり捻り出した問い」である例がよくみられる。
□自身の周りの現実社会とつながっていること。
→学校内の「ごっこ」にならないこと。「小さな設計」にしないこと。そのためには外の専門家とつくるのがいいよね。
□現実社会の文脈で行為を通して学ぶこと。
→行為を通して知識や理解を構成していく学び、というのがミソ。学習は常に状況的。「知ること」と「すること」をわけない!
□本物の実践であること(何らかの共同体に参加することを通して学ぶこと)。
→その意味ではライティング・ワークショップも、学習者に「〜たい」が生まれていて、作家のコミュニティの中で学んでいれば、プロジェクト的な学びと言えるのでは?知らんけど(関西弁)。
□学習に参加することを通して、全人的な意味で「なってよかった自分になる」こと。
→佐伯胖先生の講演がヒントに。結局、なんらかの変化が自分(たち)の中に起き、新しいわたしになるということなんだ。調べ学習程度ではそうならない。
□結果として指導要領に示された学習目標や内容に焦点があたること
→が、気にしすぎるとしょぼくなる。学びは学習者自身のためのもの。
□具体的な成果物があること
→これは意見分かれるかもね。成果物をどう定義するか。
□学習者も伴走する大人も、意味を感じワクワクすること。
→没頭できていない時点で、プロセスが苦しくても意義を感じていない時点でそれはプロジェクトとは言えない。よい学びは年齢を問わない。
□コミュニティのメンバーで協同的に学ぶこと。その学びに関わる人同士が協同探究者になること。
→相互作用ぬきにはよりよい探究にはならない!ぐらいに思うわけ。
□「何のためにやっているか」を学習者が明確に説明できること
→自分ごとになっているかどうかが、これで明確になる。もっと言えば、「説明したくなる」。学びは学習者自身のもの(2回目)。
□プロセスを丸投げしないこと、
→特に初期は丁寧なプロセスのサポートが必要。時には構成的に手厚く。これが意外とわかっていないで、任せるという名の丸投げほど無責任なことはない。
□学習者により、プロセスに分岐があること
→一本道に行くわけない。
(おまけ □ICTの文具的利用。→年齢によるが、もうこれは当たり前にしなくては。)
と、思いつくままに。
まだ続く予定。(ご意見も募集中!)
今回は自分のノーミソの中を整理するために、精査はしていません。これから軽井沢風越学園の実践のプロセスで検証していこう。
そうそう。
以前、私が6年生を担任していた頃、近くの幼稚園の年長さんが学校に来ることになりました。その1日、「学校体験」を6年生が担当することになりました。
これだけではプロジェクトたりえません。
事前に幼稚園児に「6年生に聞いてみたいことはありますか」と私から幼稚園の先生に聞いてみることをお願いしました。
その中で届いた問い。
「なんで学校に行くの?」
「何で勉強するの?」。
この問いが、探究を駆動させる質問となりました。
これに応えるとはどういうことか?
6年生は燃えました。これに応えるのは難しい!
質問への回答を探究する中で、「学校体験をどうデザインすれば良いのか?」という次の問も生まれました。次々に問いが生まれるのですよね。
さて、これはプロジェクトと言えるでしょうか?
少なくとも、この問いに対して本気になっていたのは間違いありません。ちなみにその時の幼稚園児は小6になりました。1人はうちの娘っす。
以下は、そのプロセスで生まれた一旦の回答です。
この回答を書いた人、今は大学生。
先日、私がファシリテーターとして行った「学級経営講座」に参加してくれてました。
卒業以来の再会。なんともうれしかったなあ。
今ならこの問いに何と応えるだろう?
★「なんで学校にいくの」「なんで勉強するの?」
みんなの質問に答えるね。 まず、1つめの質問! 『なんで学校に行くの?』は,学校ではみんなと同じくらいの子が集まって学校に行くんだ〜。教室には30人くらいのお友達が集まって算数とか国語とかいろいろお勉強するんだ!!
学校にどうしていくの?って思った? うちもそう思った事あるよ!!
でも、家でさあ、自分が一人で勉強してわからないところがあって、お父さんもお母さんもいなくておねえちゃんやおにいちゃんもいなくて、一人だったらどうする?? そうそう、こまっちゃうよね。だから学校に来るんだ!
学校には自分以外にだいたい30人くらいいるから、誰かは自分にぴったりの教え方ができる人がいるはずだし、先生もいるよ! だから分からないことがあったらお友達や先生に聞くとわかりやすくできるよね! 自分にも聞かれて知っていることだったら教えてあげられるよね。 そんなことを難しくいくと、
「学び合う」っていうんだ!! 学び合いをすると分からないことでもちゃんと聞けるし、 自分も教えられるんだ。 私は算数があまり得意じゃなかったんだけど、 5年生の時からその学び合いをして今は苦手ではなくなっているよ! それに教えられると先生になったつもりで少し楽しい!! それに教えてみると自分も分からないところが見つかったり、 分かってもらえるように考えると自分もカシコクなれるよ!
人にはそれぞれ得意なものと苦手なものがあるんだ。 例えば、みんなが知っている人に,こんな人と似ている人はいないかな? 外で遊ぶのが大好きで、劇とかでもいつも目立ちたい人っている?? そうそう、いるよね。じゃあこんな人は? 折り紙とかが好きで,いつもおとなしい子っている? おーいるんだ!! そう、人って得意なものと苦手なものが違うよね。
外で遊ぶのが好きなAくんはみんなの前でおどるのとか得意そうだよね。 折り紙とか好きなCさんは折り紙が得意そうだね。 外で遊ぶのが好きなAくんは折り紙は苦手そうだね。うんうん。 人にはこんな風に得意なものと苦手なものがあるんだ。 もちろんみんな1人1人にあるよ。全員が持っていることなんだ。 自分が得意なことってなに?へえ〜すごいな〜。
じゃあ反対にみんなが苦手なことは? あ〜私はおばけと英語〜。そうそう私たち一人ひとりにあったよね。 でもみんなバラバラじゃなかった? 得意なものは同じでも苦手なことはちがうとか・・・。うん!!
バラバラでいいんだよ!おたがい“サポート”しあえばいいんだよ。 おりがみをするのが好きなCさんは、 外で遊ぶのが好きなAくんに折り紙のつくりかたとか教えてあげればいいでしょ? そういって一人ひとりサポートしあうんだ〜! 今みんなが得意で出したものの中に, 他のお友達が苦手っていうのがあるかもしれないね。 そんなときは教えてあげよう! そうしたら、自分が苦手って思うことを助けてくれるよ!!
学び合うのも同じ! 算数が得意な人は苦手な人に教えてあげられればいいよね。 そうやってみんなで協力していくために学校にくるんだ。 もちろん、休み時間とかお友達と仲良く遊ぶのも大事だよ! どう?楽しみになってきた? そっかー!ありがとう(^_^)v
じゃあ2つめの質問! 「何で勉強するの?」勉強好きな人〜?キライな人〜? そっかーキライな人もいるよね。 そんな人にとっては勉強なんてめんどくさーい!みたいな感じ? うんうん・・・私も4年生のころそうだったな〜。 一応宿題とかはやっていたけど−。
じゃ・・もう1問聞いてもい? 学校に行くと毎日宿題がある先生もいるんだけど 宿題はその日やったことを先生が決めて必ずやらないといけないんだ。
やらないと怒られるぞ〜。 そんな宿題が楽しみな人?やだな〜って思っている人? うんうん、私もちょーやだったよ! 宿題が「ない!!」っていうとヤッターって行って友達と必ず遊んでいたぐらい。 でも・・・・そんなときにいいのは「自主学習」です。
まあ、『自立学習』ってみんなは呼んでね。(私もそう呼んでまーす!) 自立学習っていうのは毎日やることを自分で決めてやる学習のことなんだ!
え?無理って?? そんなことないよ! 自分が算数苦手だなーって思ったら算数の予習とか復習をやればOK! 1年生は10分程度が目安かな? 学年×10分だから私は60分なんだけどね。
自分の好きなことだから勉強系のバッチリメニューが入っていればOK!! あとは自分の好きなことについて調べたりするワクワクメニューを入れると 楽しく続けられるよ。どう?
少し楽しみに宿題がなった? 宿題と自主学習をやれるといいね! あと習い事とか急にお腹が痛くなったーっていう時はお休みOKなんだ! でも目安は週2回まで。 自分のための学習が『自立学習』 だからね。 自分にキビシクやるのがポイント!
でも1番のポイントは楽しくやること!だな! 宿題も勉強なんだけど勉強する理由は みんなが大人になって困らないためにだからだよ。
じゃ、例えばお菓子を買いにスーパーに来ています。 グミとチョコとポテトチップスを買いたいときにいくらかかるかとか、 お金はどう出せばいいだろうとかで、困るよね。
それに今私が書いているようにひらがなと漢字も書けないとこまるよね。 だから学校でで勉強して将来みんなが大人になって困らないようにするためなんだ。
だから大切なんだよ。 学び合いとか自立学習とか、 ちょっと工夫するだけで勉強がすごく楽しくて自分がカシコクなれることがたくさんあるからみんなもやってみてね。 学校は新しいお友達もできるし、 先生もやさしいし、 困ったことがあったらお兄さんお姉さんに聞けば大丈夫だし。
運動会とか行事もすごく楽しいよ! なにからなにまですっごい楽しいのが小学校! つらいこともあるかもしれないけど自分を成長させるチャンスだと思って乗り越えてね! 大丈夫。みんななら。 困ったらとなりの中学校に私がいるからいつでも言ってね。 絶対に助けるからね。じゃあ、約束しよっか。 せーの。ゆびきりげんまんうそついたらはり千本のーます!指切った! 約束!
これで質問に答えられたかな?みんなが小学校楽しみ! っていってくれたら質問に答えられたんだなー。って思っています。 最後に1年生になるみんな! 自分の夢を信じて進んで下さい。 じゃーまったねー!ばいばーい!
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校舎、もう直ぐ完成!