夜中、左胸の痛みを感じて目が冷めた。
初めてのことだったので、なんだか不安になって寝付けなくなった。
大丈夫かなあ。
このまま死んじゃう、みたいなことって可能性0とは言えないんだよなあ。
もしこのまま死んじゃうとしたら後悔するよなあ、
などうつらうつら考えているうちに寝てしまった。
どうやら大丈夫だったらしい。
その昔、あるワークショップでファシリテーターが雑談の中でこんなことを言った。
「もし余命3ヶ月としたら、何したい? ぼくはたまにそういうこと考えることあるんだよね」
「そうだなあ。家族との時間は大事にしたい。子どもまだ小さいんだけど、最近忙しくてついつい一緒の時間取れてないから、たくさん遊びたいなあ」
「両親とも全然会ってないから、会いたいかな。話せてないこといろいろある。」
「そんな大事なことなら、今すぐしたほうがいいよ。余命は3ヶ月とは限らない。30年かもしれないし、明日かもしれないから」
ついぼくらは、無限に人生が続くと思ってしまう。
ぼくの両親はその後突然他界した。聴きたかったことも、言いたかったことも、何も伝えられないままその時間は2度とやってこなかった。最後に帰省したとき、もっとちゃんと話せばよかった。あのこともっと聴いておきたかった。今も時々そう思う。心を開かなかったことへの取り戻せなさは、なかなか消えることがない。
今ぼくは死んだら後悔するだろうか。
これまでの人生、幸せだったし、その点では後悔はない。
でもやっぱり、後悔しそうだ。家族との時間を丁寧に過ごしたい。息子、娘に伝えたいことがある。軽井沢風越学園のこと、ちゃんと道筋をつけたい。まだ言葉にできてないことがあるよなあ、とかいろんな人やコトが浮かんでくるわけだ。
そう思うと、今出会っている人、これから出会う人との、その時の時間を誠実に、大切に生きたいなあと当たり前のことを今更思ったりする。
その人とのその時の時間。そこにどういるかで起きること、交わされる言葉は変わっていく。小学校担任をしているとき、総合的な学習の時間に校長先生を招いて「大人トーク」をしたことがある。
「大人トーク」とは石川晋さんが以下の本の中で紹介されてるもので、
「対話」がクラスにあふれる! 国語授業・言語活動アイデア42
- 作者: 石川晋
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
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ゲストとぼくが「対談」するという方法。
身近な(だと思っていた)校長先生から聞こえてくる物語は、子どもたちの心を動かしたようだ。途中、質問をミニホワイトボードに書いて出してもらった。こんな質問が出たりした。
子どものぐいっと踏み込んだガチの質問に、校長はガチでこたえてくれた。大人であるぼくらも聴き入ってしまうような彼の人生の物語だった。恥ずかしながら、お互いに遠慮のあったぼくとの対話の時間よりもずっとずっといい時間になった。正面を向いて丁寧に渡した問いに、正面を向いて丁寧に受け取ってくれた1時間半。
人と人が出会うときってこんな感じなんだと思う。
先日、とある中高一貫校で授業を見た。
テーマは「文学と差別」。
ドリアン助川の『アン』など複数のテクスト、題材を読んだ上で、文学と差別について対話していた。その時にある生徒の考えにぼくも深く考えさせられた。
「無知が差別や偏見を生むというけれど、無知は必ずしも差別を助長するとは限らない」
相手と出会い、知り合い、関係ができてから、その相手が社会的に差別されていると知る。その時、その2人の間には差別や偏見はないのではないか。おおよそそんな話だったと思う。
そこで思い出したCM。
さあ、今日も出会う人との時間を大切にしよう。
というわけで、今日は始発で関西出張行ってきます!