いわせんの仕事部屋

Mailは「naoki.iwase★gmail.com」です。(★を@に変えてください。スパム対策です)

単元内自由進度算数の子どもの評価。

この本が好きです。

子どものことを子どもにきく (新潮OH!文庫)

子どものことを子どもにきく (新潮OH!文庫)

 

 子どものことを子どもに聞く。当たり前のことだけれど、ぼくらはなかなかできていなかったりします。特に学校教育において生徒が参画できる場面は少ないでしょう。

『学習する学校』でピーター・センゲはこう喝破しています。

 

産業化時代の学校には、現代社会にある他のどんな制度にも見当たらない1つの構造上の盲点がある。この盲点は、学校システム全体がどう機能しているか、振り返って意見を言える唯一の存在が発言権を持たず、変革を導く意味あるフィードバックを与える権力を持たないことから生じている。この存在とは生徒だ。生徒こそ、クラス全体、家庭でのストレス、メディアが発するいくつもの対立するメッセージ、そして環境全体を見ている唯一の存在だ。

 

顧客は会社が作ったものを受け身で買うが、生徒は顧客と異なり、学校は達成すべき成果を一緒に作る人だ。生徒が自ら関わらないところに学習はありえない。私は学校における深くて持続的な進化発展のプロセスへの真の希望は生徒にある、と信じている。

学習する学校――子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する

学習する学校――子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する

  • 作者: ピーター M センゲ,ネルダキャンブロン=マッケイブ,ティモシールカス,ブライアンスミス,ジャニスダットン,アートクライナー,リヒテルズ直子
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2014/01/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (8件) を見る
 

 

例えば、ある年に聞いた、算数の単元内自由進度学習(1つの単元内で自分のペース、学び方で学ぶ学習の個別化)の評価。振り返りジャーナルで聞きました。

①今の算数の進め方のメリット

②今の算数の進め方のデメリット

③意見、感想、評価  

まずは①の今の算数の進め方のメリット。

・一人で集中することができたり、みんなでやりながら教えあえることです。一人でどんどん進めていってわからないところがあったら人に聴きにいけます。

・自分のペースで進められて難しい問題とかにも挑戦できてうれしい。他の子がわからなくて、私が教えてその子がわかるようになると私が役に立てたみたいでうれしい。

・どこが間違ったのか、探究できるし、詳しくわかるようになった。一人でわからない問題も協力して何人かでやってもいいというのもメリット。

・自分の説明力みたいなものが自分の力になるのがメリットだと思います。

・この進め方のメリットは,まずわからないことを人に聴くことができることです。これはみんなで一斉に同じことをするのでできないことだと思います。人に聴けば質問した人もわかるようになるし、教えた人もかしこくなるから。

・私の進め方は、わからないことがあったらすぐに聴くのではなく、よーく考えて,それでもわからなかったら友達や先生に聞くようにしています。

・教えたり聞いたりできるところです。わかっていても教えるのはすごく難しかったりして,すごく勉強になります。聴きに行くことで関係も広がります。

・友達を見ていて「わたしもだれかに教えてあげられるような人になりたいなあ」って思います。

・自分のペースでチャレンジゾーンにはいれること。

・わからなかったときにすぐに聞けるのがいいです。わかっている人はいろいろな人に教えたり、いろんな人同士で難しい問題の解き方を言い合えて考えが深まったり広くなったりできると思うので良いところだと思います、

・分かりやすい友達の所に行ってわかるまで聞けること。そして自分も教えられるってところ。いろいろな人に聞けるから、いろんな人の考え方が聞ける。このやり方でテストもよくできるようになった。普通の進め方の時は、先生に聞いても1回聞いてわからなかったらもう1回聞けない。聞きにくい。

・みんな一斉じゃないのがいい。

・みんなが公平に参加できるのがいいと思う。

・ゴールが書いてありはっきりしていてわかりやすいし、手順もわかっていい。

・今までわからなくても進んでいくことが多かったけど、今は自分で粘れるし、教えてって言えます。あとは教科書よりももっと難しい問題にチャレンジできることです。もっと上へチャレンジできるのがいいことだと思います

・このやり方で私は算数の成績があがりました。それはいつでも友達に聞けるし、わからないままにしないでしっかり理解するまでやるからだと思う。デメリットは私的には特にありません。友達関係もよくなるしね。

・苦手な単元はゆっくりあせらずやれるし、得意な単元ならばどんどん進めていけるし,ハイクラス問題まであるから。

・予定表を見ながら進められるし、どこが終わったのか予定表を見るとわかるからいい。何時間までに終わらせられるかもわかって、その時間まで順調に進んでいるかわかるのがいいなと思う。

・好きなときに,好きな人に聞けるし、予習ができるのがいいです。

・いつのまにか他の人と話せるようになりました。

 

②この進め方のデメリット

・自分は少し教えてもらう回数が多いかなあと思っています。だから聞かなくても,逆に教えられるよ、というぐらいがんばりたいです。いつか恩返しができる位、予習復習をします。

・あまりないなかなと思います。

・気軽に聞けすぎるところかな。だから始めに集中タイム、あとから学び合いとかそういうのもいいなあと思います。

・あまりないけど、一緒に学ぶ人を決める時に仲がいい人とかで失敗してしまったり、ハイクラス問題行く人はどんどん進められるけれど、教科書を粘っている人とかは、テストの裏の応用問題が苦手になるかも、というところが少しデメリットかなと思います。

・もし仲良しと固まってふざけたりしたら、そこはデメリットだと思う。普通の授業なら話すことはあまりないから。

・ちょい不安なときもあります。「本当にこうなのかなあ」とか思うと気があります。そういうときはやり方だけでも先生にしっかり教えてもらいたいなと思ってます。

・仲良しで集まって違う話をするってことはあると思います。

・気づくと声が大きくなってうるさくなるときがあること。

・自分に集中してしまうことかな。

・少しは教えてほしいです。

・疲れているときは他のことをしゃべったり、時間を無駄に使っちゃうことがある。

・他人に集中しすぎて,自分が進まないってことがたまにあります。

 

③、意見、感想、評価

・このままでいいと思います。教えあったり,一人で集中したり,自分の力になることがあるからです。

・今のところ順調です。わからなかったらちゃんと聞くので大丈夫。

・すごくこのやり方はいいと思います。こっちの方が勉強が進むし、知識も増える。終わった後にハイクラス問題ができるのもすごくいいです。

・私は初めてこんなに成長したと思います。自分で言うのもだけど…このままのやり方がいい。成長できる。

・自然に男女のかんけいが広がるのがいいと思う。

・ものすごく自分のためになっていることはわかるんだけど、さっき書いたように基礎や難しい問題はしっかり教えてもらいたいです。ご検討くださいませ!

・人間関係も良くなっていいと思う。

 

                          *   *   *

 

「教科書を粘っている人とかは、テストの裏の応用問題が苦手になるかも」等々、単元内自由進度の限界も指摘されていて、改善のための視点として考えさせられます。

ゆるゆかな協同性の意義も語られています。教師の役割への注文も。

「学習者に聴く」ということは新任の頃から仮説実験授業に鍛えられました(授業の評価は学習者がするという原則)。聞いてみなくちゃわからない。それは大人も子どもも同様です。

振り返りジャーナルはフィードバックの機能もあるのです。(自分の足りなさをなんど突きつけられたことだろう………)子どものことを子どもにきく。学習者からフィードバックをもらって改善する。大事にしたい原則です。

 

というわけで、教職大学院での授業でも振り返りジャーナルを書いてもらっています。同じ内容の授業のはずなのに、一人一人の学びも気づきも全然違う、という当たり前の学びの原則に気づかされる毎回です。

毎回文字数が増えていくことが嬉しいなあ。ジャーナルが短い日は、気づきの少なかった日・・授業の改善ポイントが見えてきます。しゃべり倒したときはたいていダメだな−・・・・

f:id:iwasen:20171115211435j:plain

無事コメントを書き終えたのでおビールをいただきます。