いわせんの仕事部屋

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横並びの文化

教室で何か新しいことを実践しようと思ったとき、同僚の顔や管理職が気になる。

「自分だけ勝手なことをやっていると怒られるんじゃないか」と。

これは杞憂ではなく、

実際に「あなただけ勝手なコトされると困るんだよね」とか、

「学年で揃えましょう」という言葉は全国で飛び交っているだろう。

スタンダードなどはその最たるものだ。

 

なぜそうなるのか?

学年の先生は、

「あなたのクラスだけやっていると、保護者が不安になるから」と。

管理職は、

「いいのはわかるけど、他の先生のプレッシャーになるから」と。

新しいことにチャレンジしたい人は、イライラする。

「下にあわせているだけじゃ、学校が良くならないじゃないか!」と。

 

そこを強行突破し、やがて、その人は一人尖っていって同僚とうまくいかなくなる。

実践が誰の目から見ても素晴らしく、子どもが成長している姿で周囲が納得せざるを得ない場合はまだいい(それはなかなか難しいことだ)。

たいていは野心的なチャレンジなので、うまくいかないことだらけだったりする。

そうなると同僚や管理職からの風当たりも強くなる。

その人は、意固地になって籠もるか、外に出て行って憂さを晴らすか、新しい実践を諦めるか、等々の選択をする。

結果、誰も幸せにならない。

学校の「横並び文化」はなかなかやっかいだ。

 

新しいチャレンジに対しての反応は「恐れ」なのだ。

自分がこれまで大切にしてきたことが否定されるんじゃないか。やれてないことが露呈するんじゃないか。比較され、評価されるんじゃないか。

 

未知のものに出会って恐れを感じるのは、ある意味正常な反応。

正しい言葉じゃない感じがするけれど、実践の良し悪しは事後にしかわからない。やってみたい!といくら力説しても、正当性を吠えても、説得できるわけがない。

それに対して「だからダメだ!」と吠えても仕方がない。

恐れを助長するだけだ。

 

できることは、管理職や同僚に変わることを求めるのではなく、私(たち)のアプローチを変えることなんだと思う。

例えば小金井三小のチャレンジはつまりそういうものだった。

iwasen.hatenablog.com

一緒に新しいことにチャレンジしてみよう、試行錯誤してみよう、それを共有しようという文化を築く。

それぞれ恐る恐るでも新しいことにチャレンジし続けたら、子どもや自身の変化、ましてや職場もじわじわ変わってきて、小さな成功体験をたくさんの人で積み重ねあえた。

「やってみてよかった」「チャレンジしてみて良かった」を組織で積み重ねないと、新たらしいことにチャレンジする文化は生まれてこない。

 

いい実践しているなーって人は、結局のところ職場の関係性をとても大切にしている人で、その結果イノベーティブな実践ができるんだよな、と思う。

 

「わー、おもしろそうなことやってるね!見にいっていい?」

「それいいねー!ぜひ全校に広げてよ!」

という言葉が職場に増えていくためには、私のアプローチを変えることしかない。ぼくもそれに気づくのにずいぶんずいぶんかかったし、職場の先輩諸氏には死ぬほど怒られた末にようやくたどり着けたんだけども。

 

「うちの職場はほんとクソで」なんて話を聴くと、まあそうなんだろうけれど、あなたもその一部だものね、という気持ちにならなくもない。

変化のためのコントローラーは手元にある。

 

一つだけ付け足すと、管理職や教育行政の大切な仕事は、イノベーションが起きやすい文化、自由な試行錯誤が山ほど起きる文化をつくること。特に教育委員会がんばれーと言いたい。

 

            *  *  *

 

ついでに備忘録的に冬休みに買った本。

ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来

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WHYから始めよ! ―インスパイア型リーダーはここが違う

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未来の再建 (ちくま新書)

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混ぜる教育

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なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか――すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる

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緊急提言eポートフォリオ構築法

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3月のライオン 14 (ヤングアニマルコミックス)

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一汁一菜でよいという提案

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この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた (河出文庫)

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ファーストラヴ

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幼児教育へのいざない 増補改訂版: 円熟した保育者になるために

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 幼児教育へのいざないの増補分、レッジョ・エミリアの文章がものすごく良かったな−。