いわせんの仕事部屋

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学習者側から授業を見直す。

2016年12月21日に中央教育審議会より次期学習指導要領の答申が正式に公開されました。諮問から答申まで2年に及ぶ議論の集大成です。2020年から実施される次期学習指導要領の理念となるもので、なんと243ページからなります。

 

蛇足ですがこの答申は必読です!このページに整理されています。

教育に関わる人すべての人に読んでもらいたいです。

それにしてもこのように補足説明付きでまとめてくださっているのは本当にありがたい。寺西さん、ありがとうございます。

ictconnect21.jp

 

ちなみにボクは年末、ディズニーランドでビックサンダーマウンテンに並んでいるときに読破しました。243ページの内容にしびれました。

この答申でボクが注目しているのは、コンテンツベースからコンピテンシーベース、すなわち資質・能力の枠組みで教育課程を再定義する必要があると指摘しているところです。資質・能力は3つの柱に整理されます。

①「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」
②「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」
③「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」

今まではどちらかといえば「教師が何を教えるか(何を教えたか)」にフォーカスが当てられていました(教授主義)。ですから

ちゃんと授業で教えたのにテストできてないなあ。ちゃんと聞いていなかったな」

等という言葉が職員室で聞こえてくることもあったわけです。

今回コンピテンシーベースへとカリキュラムが改革されることに伴い、これから問われるのは、学習者が「何を学ぶのか」「どのように学ぶのか」そしてその結果「何ができるようになるか」へと軸足が大きく変わるのです(学習主義)。

徹底的に学習者、つまり子ども側から授業やカリキュラムを考え直そうという提案です。

 

答申では「主体的・対話的で深い学びの実現」が提案され、授業改善の視点としてアクティブ・ラーニングが取り上げられています。

では「主体的・対話的で深い学び」とは具体的にどのような学びなのでしょうか?これについて答申には以下のように書かれています。

 

①学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。

子供自身が興味を持って積極的に取り組むとともに、学習活動を自ら振り返り意味付けたり、身に付いた資質・能力を自覚したり、共有したりすることが重要である。

 

②子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。

身に付けた知識や技能を定着させるとともに、物事の多面的で深い理解に至るためには、多様な表現を通じて、教職員と子供や、子供同士が対話し、それによって思考を広げ深めていくことが求められる。

 

③習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。

 

「アクティブ・ラーニング」とはこのような学びを実現するための授業改善の視点であり、ペアワークを導入したり、ホワイトボードを使う=アクティブ・ラーニング、というわけではないのは大切なところ。例えば一人で本を読みながら深く考え、その考えをまとめている時も「アクティブ」であると言えるわけです。特定の方法や考え方ではないのですね。

 

となると。

「アクティブ・ラーニングの視点」とは、常に学習者側から学びを見直してみようという提案と言えるのではないでしょうか。学習者一人ひとりに「主体的・対話的で深い学び」が実現しているのか。

言うはやすし横山はやすしですが、だからこそ楽しい。チャレンジングです。

答申17ページには

「全ての子供は、学ぶことを通じて、未来に向けて成長しようとする潜在的な力を持っている」

と書かれています。

私たちはここを出発点に、その力が発揮される授業・学校を根本から考え直していきたい。大人である私たちがその未来を探究し、試行錯誤し続ける姿そのものが、子どもたちを主体的・対話的で深い学びへと誘うのではないかと思います。

 

続く。