いわせんの仕事部屋

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本を小脇に抱えて生きていく。

本を読んで対話すること。

ストーリーを媒介にして他者と語り合うことで、普段の会話とは違う深まりが出ることがある。

間に挟むストーリーがとても重要。

それはきっとリフレクションの時間でもあり、あるストーリーを媒介にすることで、自分の経験と照らしたり、思わぬ発見があったり、自分の中で言葉になっていなかった思いや暗黙知が言語化されたり、自身の生き方を振り返ったり。

 

教員にとっては、文脈も含んだ教室の様々なエピソードを媒介にして対話することで、自身のリフレクションが深まる。

そのようなテキストが増えるといいな。増やしていこう。

 

子どもたちにとっては、それは自身の年齢に近い主人公の物語。

子ども同士のブッククラブ(読書会)は、ただ読みを深めるだけではなくて、

それぞれの人生のリフレクションと、未来を描く時間なのだろう。

それを「国語」とくくってしまうのは、大人の都合。

 

例えば、高学年の女子にとっては、この本がいい。

 

非・バランス (講談社文庫)

非・バランス (講談社文庫)

 

 

この本で語り合う6年生の子どもたちは、こんな感想を語る。

 

            *  *  *

・一度は座り込んで立ち方がわからなかった2人。

でも立てた今、ずっとくっついているわけにはいかない。

手を離して今度こそ自分にならなければ・・・
私もいつ座り込んでしまうかわからない。

座り込む回数は1回かもしれないし、15回かも知れない。
座りこんでも、すぐ立てるかも知れないし、立ち方がわからなくなるかもしれない。
でも生きている限り、悩むし苦しむ。
でもそんな時どうすればいいの?
一人で立ちあがらなきゃいけないときもある。
でも時には、声を上げることも大切。
その時の練習をこのクラスはしてたんだ。

 

 


・タイトルの『非バランス』。
「バランス感覚のすぐれたひと」とか

「バランスのとれた人格」というのは

上級に属するほめことば。

でもどうしてもバランスを取れないときがだれにでもある。

深い穴に落ち込んだように感じ、もしかすると一生その穴から抜け出せないんじゃないかと苦しむけれど、実はその時、ジャンプ台に立っている。

これから大きく飛び立つためのジャンプ台。

魚住さんが伝えたいことは、

バランスが取れないとき、失敗した時に大きく成長できる。
だからバランスを取れてない時を大切にしてほしいってことかな。

 


        *  *  *


読んでいろいろ話したんだな。考えたんだな。
そう、バランスをくずすこともある。座りこむこともある。
でもそれでいいんだよね。
ボクだって、今でもそうだもの。
これからも本を読み続けてほしいな。
本物に触れ続けてほしいな。
本はきっとその時その時の力になってくれる。

本はいつも対話の相手になってくれる。

振り返りの相手になってくれる。

 

 

子ども時代。

本といい出会いをして、

本を小脇に抱えて生きていく。

そんなきっかけを作れたら学校の仕事の大きな一つは終わりだと思う。

大人は子どもの人生にずっとついていけないけど、本は一生伴走してくれるもんね。