いわせんの仕事部屋

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オススメ本。『セラピスト』。

体調を崩していて、しばらく更新できませんでした。
ようやく元気になってきたので、今日から復活です。


病床でちょこちょこと読み進めていた本が読み終わりました。

セラピスト

セラピスト


絶対音感』で有名な最相葉月さんの最新刊。

絶対音感 (新潮文庫)

絶対音感 (新潮文庫)

最相さんの本を読むのはそれ以来です。


学校現場でもカウンセリングの重要性が認知されてずいぶ経ちます。
心の病、の問題は子どもたちはもちろん、大人であるボク達にも、決して遠くないテーマです。
最相さんが後書きに書かれていますが、この世の中に生きる限り、私たちは心の不調とは無縁でいきられません。

カウンセリングが日本に持ち込まれてまもなく65年だそうです。
最相さんは、河合隼雄中井久夫という2人の巨匠に焦点を当て、65年の歴史を丹念にひもときます。


驚くべきことに、彼女自身が大学院や民間の研修期間に通って学びつつの取材であると言うことです。文献の読み込みも半端ないです。
さらに自身がクライエントを体験(最相さん自身が心の病に向き合っています)、中井久夫を相手にセラピスト体験までしています。


ここまで誠実に真摯に向き合ったノンフィクションに久しぶりに出会いました。
すべての人に読んでほしい本です。


教員や、それを志している方には是非読んでいただきたい。


中井や河合のクライエントへの向き合い方、「関与的観察」というアプローチ、物語を紡ぐことへの危険性、是非触れてほしいです。


ここ数年のノンフィクションベスト1です。




治療は、どんなよい治療でもどこか患者を弱くする。不平等な対人関係はどうしてもそうなるのだ。その不平等性を必要最小限にとどめ、患者が医師に幻想的な万能感を抱かず、さらりと、「ノー」といえることが必要である。両者は患者の後の生活のひろやかさの大幅な増大となってみのりうるものだ。このことの重要性は精神医学に限らない。

「物語を紡ぐということは、一次元の言葉の配列によって二次元以上の絨毯を織る能力ですからね。そこに無理もあるのです。言葉にならない部分を言葉のレベルまで無理に引き上げることですから」

「クライエントによりますが、基本的に人間は浮いてくるんです。無理に引っ張りあげようと思う必要はない。ただ、浮いてこなかったときにどうするかは工夫がいります。浮いてこないのを無理に引っ張りあげないほうがいいときもあれば、浮き上がらせるためにやったことが裏目に出ることもある。潜水病になることもあります。今沈んでいるんだというのを耐えなきゃいけないときもある。引っ張りあげないといけないと思っているけれど、それは勘違いで、セラピストだけが戻りたいと思っているだけかもしれないこともあります。なかなかむずかしいことです。だから、セラピストは自分を知っていないといけない。ただ、自分を知るといっても・・・・・・」