いわせんの仕事部屋

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『わたしたちの「撮る教室」』。

北海道の石川晋さんから写真絵本を送っていただいた。

石川さんの新刊だ。

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41名の中3の若者たちが写真家の小寺卓矢さんと、石川晋さんと1年間取り組んできた写真集づくり。

その取り組みの様子を通して、子どもたちの日常の様子を写真を通して描いた写真絵本だ。

 

「教室は雑木林」と石川さん。

雑木林の中で、まったくもって異質な人たちが、それぞれの大切なことを持ちあるいは探しながら、何に出会い、どのように暮らし、どのように笑い、どのように悩み、どのように遊び、自分というファインダーを通して世界をどのようにながめているのか。ながめようとしているのか。

そんなことを考えながら何度も何度もページをめくった。

ファインダーから世界を見る子どもたちの姿が美しい。

何度も目元がじわじわきた。

 

これは石川さんの学級づくりの本なのだと思う。 

学級づくりの本って、実は「どうすればつくれるか」を描くのものではないのだろう。

例えば、この写真絵本のように、

「そもそも学級ってなんだろう」という問いに寄り添ってくれる本。

教室の主体者である子どもの側から問い直す営みに寄り添ってくれるものなのだと思う。

誰が学級をつくるのか。

ボクらはそれを見失いがちだ。

 

たまたま研究室に遊びに来てくれていた現職の院生が、

「これは石川さんの卒業アルバムみたい」と。

うん、ボクも同じことを思いました。

 

この本から感じられる風がとてもやわらかい。

ひとつでも多くの教室に、やわらかい風が流れますように。

 

石川さん、この本大切にします。

『きょうしつのつくり方』への返歌として(勝手に)受け取ります。

 ありがとう。

わたしたちの「撮る教室」

わたしたちの「撮る教室」

 

 

ボクはこの絵本が好きだ。

だから多くの人にぜひ手にとってほしいです。

そして感じたことをじっくりと対話したいな。

教室ってなんだろう?を手がかりに。

 

学級づくりを問い直す?

今この本を読んでます。

学びのイノベーション――21世紀型学習の創発モデル

学びのイノベーション――21世紀型学習の創発モデル

  • 作者: OECD教育研究革新センター,有本昌弘,多々納誠子,小熊利江
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2016/09/22
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 この中に、とても刺激的な箇所を見つけてしまいました。

 

3章「研究に基づくイノベーションに向けて」

現代の小学校の堅固で伝統的な習慣では、学期の最初の数日から数週間をコミュニティ構築に捧げ、その後で教育目標が付け加えられる。教室での指導規範を迅速に確立することは、確かに価値があるが、コミュニティ構築のために多くの時間を初期投資することは間違っているかもしれない。そのことが、教育業務を先へ進める際に後から克服すべき問題を多く生み出してしまうことがよくある。実現可能な、最も高いレベルのディスコースを組み立てることから始めるのがよい(そして様々な種類の学校経験では、最も若年層でさえレベル5が到達可能であることを示している)。いったん持続可能で有意義なディスコースができれば、必然的にコミュニティが生まれ、そのディスコースが認知的ゴールを指向したものであれば、そこに属したい、教育ゴールのサービスに順応したいという、生徒の自然な同期を取り食える、学習創造や知的創造のコミュニティが得られる。(p102)

 

ここでいう「レベル5」というのは、教育プロセスにおける対話を5つのレベルで表したものです。

 

レベル1 暗唱
レベル2 教師を介した対話
レベル3 教師が管理する議論やディベート
レベル4 独立した小グループのディスカッション
レベル5 真の問題解決のディスコース

本章によると、ほとんどの学校は最高でレベル3ではないかと喝破しています。

このレベル5は、「真の」がポイント。
生徒が実際ある問題に関心を持ち、それを単なる練習とは考えない」こと、つまりそのコミュニティにおいて何かを計画したり、デザインしたり、解決したりしたくなる真の問題からスタートするということです。

 

考えさせられる記述です。

ボク自身も「当たり前」だと思ってた前提を疑わなくてはならないようです。

教室リフォームプロジェクト=自分たちが学びやすい環境を、当事者自身がデザインすることからスタートは、もしかしたらかなり重要なことなのかもと我田引水。

これは半分冗談ですが、学級経営とは何か、のそもそもから考えなくてはならないようです。なぜ新学期の最初に「学級づくり」が必要なのか?そもそも必要なのか?今行っていることで実際に学んでいることは何か?

そもそも学級制度って?

この本、お薦めですよ。最新の学習科学が概観できますし、オルタナティブ教育の価値を学習科学から見直す章も読み応えあります。

 

 

家の中に小さなコーナーをつくる。

学習環境の中に、何らかの機能を持たせた「コーナー」をつくると、学びやすい空間になります。

例えば、

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畳があるところは「読書コーナー」。このコーナーが子どもたちの読書を促進するのです。手前のイスは「クールダウンコーナー」。感情的にカッとなってしまったときに、ここに座って、ぬいぐるみをだっこします。

ここに座っている人はそっとしておいてほしい人なので、みんなそっと見守ります。それによって感情的に揺れることがあっても教室に居場所ができます。

 

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将棋好きな子がつくった「将棋コーナ−」。教室がリビングルームのような居心地の良さに。ここから「好きなこと、興味あること」を通じて新たな関係性が生まれます。

 

とはいえ。

学級担任ではなくなり、大学に来てしまったボク。

教室リフォームプロジェクトができない。コーナーがつくれない。

さみしい。

 

・・・・・・・!

 

そうか。家の中でやってみよう。

小3娘、最近じんわり読書から遠ざかっている。よく眺めてみると、新調したリビングのソファーは無駄にでかくて寝っ転がってしまうことを誘発してしまう(笑)。失敗した。

飼い始めたインコがかわいくて、ついつい小屋の前に常駐してしまう。

そんなこんなで少しずつ本が遠ざかってしまっていました。

 

インコは、ボクの勉強は邪魔ばかりするんですけど。おい、勉強にならないだろ。

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でもかわいい! 癒されるなあ。インコ最高。

すみません、横道にそれました。

 

おし、リビングに「読書コーナー」をつくろう。

「ねえ、小3娘~、このすみっこにさー、図書館つくろうと思うんだけどどうだろう?」「図書館?」「そう、小3娘専用の図書館!テレビのリフォーム番組みたいに!」「私専用なの?」「そうそう、明日さ、本とか家具とか買いに行ってつくろうよー」

ふふふ。すっかりその気になりました。

 

そして日曜朝、「おとーさん!買い物行こう!」。

まだ眠いんだけれど・・・オクサンは出かけているので起きるしかないか。2人で「お値段以上ニト○」にお買い物にいって早速図書館作り開始です。「このボックスはどう?」「色がなあ」「イスにしようかな-、でもこのふわふわのクッションもいいなあ」2時間近くあれやこれや物色し、カラーボックス、座椅子、小さなテーブルをゲット。帰り道にブックオフによって少し本を買い足して帰宅。

さて、使うスペースは1畳ぐらい。リフォーム開始です。

買ってきたカラーボックスやらイスやらを開封して、

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さあ組み立てよう。

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がんばれがんばれ。

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 20本ぐらいねじを回したのでずいぶん上手になりました。自分でやるのが大事。時間がかかっても我慢我慢。

ボックスができたので、本をセットして、イスをセットして、小さいテーブル置いて、完成!キャンプ用のランタンもちゃっかり持ってきていました。

 

「なんということでしょう!」(ビフォーアフター風)

 

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おしゃれな「読書コーナー」ができました。

なぜか中2息子まで影響受けて一緒に読書。場って大事。

  

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ボクも近くに寝そべって読書。

ちょっとしたコーナーですが、ステキなリフォームになりました。

うれしくなった娘は、3時間近くずっと本を読んでいました。3冊読破。

 

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 小3娘、読書カードを自作し始めました。

どんどん「図書館化」が進みます。すごく楽しそう。

自分の手で自分の環境を変えていく営みこそが、自分の人生の主人公になることなんだろうなあと思います。ここを大人がやって「あげて」しまっては台無し。ついやっちゃうんですけどね・・・・・(反省)、いろんな場面で・・・・・(猛省)。

この小さなコーナーを一緒に大事に育てていきたいなあと思います。

学校でも家庭でも日常的にこんなことできたらいいな。場へのオーナーシップこそ、子ども時代の原体験で最も大切なことの1つだとボクは思っています。

 

読書をし続けて身体を動かしたくなったので、夕方は家の前で「夕方家の前で遊び隊」実施。最近恒例の息子とのキャッチボール。あー楽しかった。f:id:iwasen:20161120162358j:plain

 

メモ。

子どもが幸せそうな学校。

関わる大人が幸せそうな学校。

学ぶこと、変わること、関わることが幸せな学校。

すごくすごくシンプルなことだ。

シンプルだから難しい。

でもシンプルだからできるはずだ。

 

幸せは事後に感じることだろうか。
でも、「幸せそう」は今感じられそうなことだ。
何かが、誰かが幸せそうに見えるときは、それがなんとも自分をうれしくさせてくれるときは、自分の中の「こう生きたい」が投影されているときなのかもしれないな。

 

秋は木々がきれいだなあ。

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今週読んだ本。(まだ今週の途中ですが…)

アメリカ大統領選が終わりました。

これから社会にどうコミットしていくのか。

教育を通してボクは何をしていくのか、深く考えさせられる1日。

この5年くらいは、未来から見れば「世界が大きく変わった節目」になってしまうのではないだろうか。今からできることはなにか。

 

今週は主にカリキュラム、教育課程に焦点を当てて読んでます。

カリキュラムと目的 -学校教育を考える-

カリキュラムと目的 -学校教育を考える-

  • 作者: ジョナス・F・ソルティス,デッカー・F・ウォーカー,佐藤隆之,森山賢一
  • 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
  • 発売日: 2015/03/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 ★★★★★

これは大当たり。カリキュラム理論を概観できる。3日間電車のお供でした。

来年度の教科書にしてもいいぐらい。デューイからタイラー、マクタイの逆向き設計まで網羅されている。問いも多く、他者と読み深めるのにもいい。しかも読みやすい。

 

 

自由教育(フリースクール)をとらえ直す―ニイルの学園=サマーヒルの実際から

自由教育(フリースクール)をとらえ直す―ニイルの学園=サマーヒルの実際から

 

★★★★★

再読。永田台小でもお世話になっている永田さんの本。

最初に読んだのは初任5年目くらいだったと思う。今読むとまた味わいが違う。

徹底した経験カリキュラム。

サマーヒルでの教員経験がある永田さんならではの自由教育の「不自由」への言及が興味深い。ニイルの学園が、「自由・平等・民主主義」を実現するために、①自由「授業参加の自由」、②平等「大人ー子どもの対等な関係」、③民主主義「自治」、を実践の軸としていくのだが、そこで何が起きていたのかがエピソードを通じて書かれている。

永田さんのまとめ、「学校自治を成功させるために」は示唆に富む。

1,大半の生徒が公的な生活に関心を抱き、自治への参加意志があること。
2,幾人かの生徒がなんらかの自治の経験を持っていて、理性的な判断力を身につけていること
3,学校生活全体に「慈しみのある権威」があること。

 

また教育において自由を活かすための条件もうならされた。

教育において積極的に自由を活かすには、やはりそれなりの順境がなくてはならない。
そのためにはいくつか条件が不可欠なのだろうが、以下の三条件は重要だと思われる。
ひとつは物理的な条件である。もちろんぜいたくな環境を整える必要はないが、少なくとも、子どもの安全・健康のためにふさわしい環境や生きていくうえで必要な基礎学力を養う学習環境は与えられなくてはならない。
第二番目にあげるのは、技能的な条件である。授業を行う教師の教える技術・力量が伴わなくては、せっかくの学習環境も活かされないだろう。授業法にかぎらず学校運営等のテクニカルな側面も管理者に求められる技能であり、この条件に含まれる。
第三の条件は、精神的な条件であり、それは、私たち大人の心構えと深く関連している。いくら物理的な条件や技能的な条件が整っていたとしても、精神的な条件が満たされなければ、その自由学校は陥穽にはまってしまうだろう。
当然のことだが、精神的な条件はわれわれの目に見えず、なかなかとらえにくい。自由学校に多くの問題が発生するのはこのためといえよう。(p168−169)

 大人の役割も。

自分の受けもっている子どもたちが何にも興味を示さないことを嘆いていた、自由学校の教師に会ったことがある。「子どもは生まれながらに創造的なはずなのに……」と。しかし人間が何かに興味を持つということは、必ず何かしらの動機があるのであり、想像力は何もないところからは生じない。だから、子どもが創造的であってほしいと望むのであれば、ときには大人が子どもの世界に積極的に関与することも必要なのである。自由教育で標榜される「自主性」や「創造性」、「自己表現力」とは、大人の関係があってこそ活かされる概念だろう。そもそも教育とは、大人からの一方的な営みでも、子どもだけの営みでもなく、あくまで両者の関係性があって成立するものなのだから。(p117)
成功しているといわれる自由学校では、日常生活は基本的に単調で退屈なのだが、そのなかで日々、子どもにたいして応えていこうとする適度の緊張感と充実感が職員間であり、子どもたちの要求に大人達はときにはユーモアをもって感情豊かに、ときには理性を持って厳しく接しているのだろう。ニイルの教育実践もこのような脈々とした営みだったに違いない。
(p180−181)

ぜひ手に入れて読んでいただきたい本。

ちなみにボクの本は永田さんのサイン本です。うふふ。

 

学校をかえる力―緒川小学校・学校改革の軌跡 (オープンスクールの挑戦 (Vol.3))

学校をかえる力―緒川小学校・学校改革の軌跡 (オープンスクールの挑戦 (Vol.3))

 

★★★★★

 

これは大学4年生のときにはじめて読んだ。

緒川小の10年間の学校づくりの記だ。研究主任であった30代の成田先生の熱い思いがほとばしる本だ。エネルギーのベクトルを外ではなく校内に向けているのがすごい。

それにしても今読んでも緒川小の先進性に驚かされる。

このカリキュラムをボクらは一歩も超えられていないのではないか。

ちょっと前に、ISAKをつくった小林りんさんの本、

 

茶色のシマウマ、世界を変える―――日本初の全寮制インターナショナル高校ISAKをつくった 小林りんの物語

茶色のシマウマ、世界を変える―――日本初の全寮制インターナショナル高校ISAKをつくった 小林りんの物語

 

 も読んだが、「想い」って本当に本当に重要だ。

あとは今週中に、

 

学校と社会・子どもとカリキュラム (講談社学術文庫)

学校と社会・子どもとカリキュラム (講談社学術文庫)

 

 を再読したいなあ。

とはいえ、少々疲れ気味なので明日の通勤本は、

 

また、同じ夢を見ていた

また、同じ夢を見ていた

 

 にしよーっと。

 

君の膵臓をたべたい

君の膵臓をたべたい

 

 は、号泣してしまった−。住野よるさんの文体って好き。

 

 

速報:あすこまさんのお話を聴いてきた。

忘れないうちに,夕食前にメモ書き。

まだ修正してないので、まだ未完成ですが、とりあえず。もう少し深めたいこと,書きたいことが2,3あるが、それはまた改めて時間ができたときに。今回は速報です。

 

今日は、西多摩PACEに子連れで参加。子守担当だったので子どもに付き合ってもらった。まあ、大人の学びの場を感じるのもいいことだろう(言い訳)。

西多摩PACEは、盟友・甲斐﨑が主催するサークルで、近所でやっているのだが、まだ参加は数回(笑)。
今回は、あすこまさんのお話。あすこまさんは中高一貫校の国語の先生。ライティング・ワークショップを2008年から実践されていて、最近までイギリス、エセクター大学に1年間留学し、研究されていた。
ボクは、『作家の時間』を出版したことからもわかるように、ライティング・ワークショップを実践し続けてきた。
その可能性を実感していると共に、その難しさも感じていた。そこで今回のお話。


研究からみたライティング・ワークショップってどうなのだろう。効果と課題って?
最も関心の高い内容の1つ。あすこまさんはブログも書かれていて、そこでも学ばせていただいてる。

askoma.info

このブログ、すごいっす。作文に関心がある方は必読。

今回なにより期待していたのは、
ナンシー・アトウェルの学校訪問のお話。リーディング・ワークショップ、ライティング・ワークショップを実践している人にとっては神様みたいな人。
その学校を日本人で初めて参観されたあすこまさん。
これはもう行くしかないのでした。


ライティング・ワークショップがどのような実践かは,関連書籍を読んでいただくとして、

 

ライティング・ワークショップ―「書く」ことが好きになる教え方・学び方 (シリーズ・ワークショップで学ぶ)

ライティング・ワークショップ―「書く」ことが好きになる教え方・学び方 (シリーズ・ワークショップで学ぶ)

  • 作者: ラルフ・フレッチャー,ジョアン・ポータルピ,小坂敦子,吉田新一郎
  • 出版社/メーカー: 新評論
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 単行本
  • 購入: 7人 クリック: 40回
  • この商品を含むブログ (18件) を見る
 

 

作家の時間―「書く」ことが好きになる教え方・学び方(実践編) (シリーズ・ワークショップで学ぶ)

作家の時間―「書く」ことが好きになる教え方・学び方(実践編) (シリーズ・ワークショップで学ぶ)

 

 

今回のお話では,研究から見たライティング・ワークショップの効果と批判、課題が興味深かった。実践者はこんな風に研究を参照しながら自身の実践をブラッシュアップしていくということが重要なはずなのだが、日本では(自分も含めて)それがとっても弱い。あすこまさんは、目指したいモデルのお一人だ。

 

今日あすこまさんの話で印象的だったのは「苦手な子への効果は認められない」ということ。何が要因なのかは検討が必要だ。教育社会学では、自由度の高いカリキュラムは学力差が広がると検証されていることが多い。ライティング・ワークショップでも同じことが起きやすいのかも知れない。
楽しそうに書いている(動機づけられている)からそれでいいのか?今までの作文教育より楽しい(楽しそう)だからそれでいいのか、そもそも何のためにライティング・ワークショップを取り入れるのか、は問い直したいところだ。
(ただ、イコールよくないというわけではない。そこを超えることはできるはず。その危険性を認識していることが大切だろう。そしてなによりも楽しいことはいいことだ。)

効果に関しては担当の教員による、と考えるのが妥当だろうし、あすこまさんも似たようなことをおっしゃっていた。ワークショップオールオッケー!ではないということだ。

 

 

一番楽しみにしていたナンシー・アトウェルの学校の話。彼女がつくった学校での実際が知れたのが今回の一番の収穫。あすこまさんのリアルな参観記に、もう興奮が止まらなくなった。

www.youtube.com

 

時間割を見るとほぼ毎日90分のリーディング、ライティングの時間があり、毎日30分の読書の宿題があるほど,読むこと・書くことを徹底している。
意外だったのは、生徒同士が学び合う時間はほとんどなく、「淡々と個人作業」(あすこまさんの言葉)しているということ。
教師の「読むこと・書くことの専門性」と「生徒理解」に裏打ちされた個人へのカンファランス(個人への指導・支援)が中心になっている。先生が「個人に対して教える」ということが大切にされる。
ここは考えさせられるポイント。

ボクらが依拠した『ライティング・ワークショップ』は教師の立ち位置はファシテータ-に近い。
あすこまさんの話では、ナンシーアトウェルも第1作の本ではそうだったが、次第に「教える」ということに軸足を移していったらしい。

日本のライティング・ワークショップの実践も第1期(アメリカでの80年代)がそろそろ終わることなのかもしれない。
プロセスに着目し、学習者が「作家になる」というワークショップの学び方が、これまでの日本の伝統的な授業のあり方に一石を投じたのは間違いない(と思いたい)。

しかし、その実践はどうしてもプロセス重視で、コンテンツの部分が弱かったのではないか(特に小学校教員)。
これは何もライティング・ワークショップに限らない。ファシリテーションのプロセスでの機能を活かしている他の実践にもいえることだ。
そしてこれは決して悪いことではない。
これまでは「教える」に重心を置きすぎ,学習者の学びのプロセスへの関心が弱かったと考えるからだ
しかしそれだけでは、「活動あって中身なし」になるのは間違いない。
もう一度、コンテンツの重要性を再認識すべきときなのだと思う。2つは両輪だ。当たり前と言えば当たり前なのだが。

「読むこと,書くことの専門性が高さ」と「学びのプロセスのデザイン」の両輪が回ってはじめて、このような実践が「学習者のためのもの」になるのだろう。

「個人に教える」ということの価値を改めて考えたい。それは一斉授業だー!ということではなく、学習の個別化の方向性だ。

日本でのライティング・ワークショップの実践が第2期へ向かう時期なんだと今日確信。

ちょんせいこさんが、「ゴリ(ボクのこと)、大事なのはコンテンツやで」と出会って以来ボクに言い続けてきてくれたことが、ドスンと腹落ちした1日でした。

いやあ、おもしろかった−。
こういう話きくと現場に戻りたくなるなあ(笑)。

今日は,研究室の院生も3人来てくれた。
今日この話を共有できたことは、これからのボクらの学びにとって大きな意味があるな。

 

 

というわけで速報でした。

教師が書き続けること、学習環境、についてもまとめたいので改めて。

アトウェルの学校は「芸術を核としたコミュニティ」だったそうです。ボクは何を核にしたいだろう。

そして改めてライティングワークショップ、リーディングワークショップの魅力を再確認しました。

 

それにしても、あすこまさんってすごい。

研究者的な実践家。

理想的な姿だ。

今週読んだ本。

今週読んだ本。備忘録として。

 

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)

 

 ★★★★★

探究的な学びを目指す人は必読。まずは大人が探究人になろう。

遊びの重要性も指摘しています。

 

人が集まる建築 環境×デザイン×こどもの研究 (講談社現代新書)

人が集まる建築 環境×デザイン×こどもの研究 (講談社現代新書)

 
子どもとあそび―環境建築家の眼 (岩波新書)

子どもとあそび―環境建築家の眼 (岩波新書)

 
こどもの庭 仙田満+環境デザイン研究所の「園庭・園舎30」

こどもの庭 仙田満+環境デザイン研究所の「園庭・園舎30」

 

★★★★★

仙田さんの本を3冊。『子どもとあそび』は初任の頃以来の再読。今もなお新しい。いや、子どもの遊び環境はますます悪化している。

それにしても幼稚園、保育園の建築はおもしろい。「あそび」を大事にしているからだな。学校へのヒントがたくさんある。学校建築は前例や慣習にとらわれすぎているのではないか?とすら思ってしまうほど。

 

滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)

滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)

 

 ★★★★★

今半分くらい。これまで読んでいなかったことをただただ後悔。

 

 

やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

 

 ★★★★

ダックワースの有名な本。ようやく邦訳。ポジティブ心理学に興味ある人なら。

そのために何かする、っていうのはちょっと方向が違うと考えている。

子どもの頃に遊びに没頭する体験、試行錯誤しまくる体験が根っこにになるのではないかな。


アンジェラ・リー・ダックワース 「成功のカギは、やり抜く力」

 

 

学習する学校――子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する

学習する学校――子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する

  • 作者: ピーター M センゲ,ネルダキャンブロン=マッケイブ,ティモシールカス,ブライアンスミス,ジャニスダットン,アートクライナー,リヒテルズ直子
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2014/01/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 ★★★★★

読書会に備えて「教室」の章から再読開始。

 

 

ヴィゴツキー入門 (寺子屋新書)

ヴィゴツキー入門 (寺子屋新書)

 

 ★★★★

遅ればせながら・・・・